院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

名古屋市役所裏金問題の本質

2007-12-29 08:25:24 | Weblog
 名古屋市役所が裏金問題で叩かれている。

 20年前、私は名古屋市立の精神障害者リハビリ施設の長をやっていた。そのころにはすでに、裏金が存在した。係長級だった私は、裏金を前任者から受け継いだ。たいした額ではない。10万円もいかなかったと思う。訳もわからぬまま、私はその帳簿を引き継いだ。

 リハビリ施設のような弱小施設にも裏金があったのだから、保健所のすべてに裏金があった。名古屋市の職員は、末端にいたるまで裏金の存在を知っているはずである。それを、本庁(名古屋市役所)が調査するとは笑止千万である。いまは監督的な立場にある市役所の課長級以上も、かつては係長を経て出世したのだから、知らないはずはないのである。

 ただ、彼らの名誉のために言っておきたい。裏金は私利私欲のためにはいっさい使用されていないということだ。

 役所は杓子定規だと常に批判される。私も役所にいた時代にはそう思った。余った予算は本庁の収入役室に返還する決まりがある。私の部署で10円余ったことがあった。その10円を返すために、職員が一人、半日かけて交通費を使って、収入役室まで行ったことがある。

 バカらしいこと甚だしい。でも、そうしないと批判されるのである。裏金問題もその延長線で考えないと、単なる税金の個的使用として片付けられる恐れがある。

 裏金は主にどういう使われ方をしていたかを述べたい。

 私は名古屋市旧衛生局のことしか知らないけれども、裏金はまず長が町内の会(運動会や剣道大会など)に招かれたときの祝儀に使われた。会の後には必ず呑み会がある。そこへ出て、ただで帰ってくるわけにもいかない。だから、3000円程度の祝儀を包む。しかし、それは長のポケットマネーである。1回や2回ならよいが、月に10回ともなると公務員の薄給では苦しい。そこで裏金が使われるのである。(町内の会の祝儀という名目の予算は役所は出してくれない)。

 もうひとつ大きいのは、常勤医師が病気で休んだ場合、日にちを変えられない3歳児検診などへの急な外部の医師招聘の予算である。

 急に来てくれた外部の医師へ、来年度の予算から払うからそれまで待ってほしいと誰が言えるだろうか?この賃金にも裏金を使わざるをえなかった。予算という枠にしばられないためには裏金を使うしかないのである。

 今回、裏金が表に出てしまったことで、役所はさらにお役所的になるだろう。杓子定規だと大批判を受けることになるだろう。裏金はお役所仕事に潤いをもたらす潤滑油だったのである。

 本庁がこうした事態にも対処することができるように予算を組むようにしなければ、末端が苦労をするだけのことになる。お役所仕事にますます拍車がかかるだけである。