院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

長寿の秘訣

2011-10-28 07:22:19 | Weblog
 100歳の長寿者には、市長から記念品が贈られる。そのこと自体には別に問題があるとは思わない。

 私が変だと思うのは、その様子がテレビなどで報道されたときに、インタビュアーが判で押したように次の質問をすることだ。

 「長寿の秘訣は何ですか?」

 長寿者もまじめに答える。「毎晩、おちょこ一杯のお酒を欠かさないこと」、「好き嫌いなく何でも食べること」、「ラジオ体操を必ずやること」ect.99歳のあの日野原重明さんさえ朝食にはこだわっている。

 そんなことをしても100歳まで生きられる保証はない。要するにその人が100歳を迎えたのは「偶然」に過ぎない。

 だが、「たまたまですね」とか「よく分からない」と言った返事は長寿者からはまず聞かれない。

 100歳と言えば必ず明治生まれだ。当時、統計学はまだ発達していなかったのだろうか?むろん学校で教わることはなかっただろう。

 統計学では正規分布(ガウス分布ともいう)が基本としてよく出てくる。平均くらいの標本が圧倒的に多くて、平均から偏るほど標本数が少なくなる。だが、いくら平均からかけ離れても、正規分布では絶対にゼロにはならない。

 平たく言えば、どんなに玉が入らないように釘を調整したパチンコ台でも、何千回、何万回に一回は玉が入ってしまうことがある。長寿者はその玉に似ている。どうして、その玉だけ入ってしまったのか理由は分からない。

 だから、長寿者は「偶然ですね」と答えるのが正しい。私がもし100歳まで生きて、同じ質問をされたら、そのように答えようと思っている。

 それにつけても「長寿の秘訣は?」という質問は、愚劣な質問である。長寿者に向けられる質問の中で最低の質問だと私は思っている。