また修理の依頼が有った。
この機種は以前にも、何台か扱ったことが有るのだが、修理完了率が低い(コントローラー装置に接続されていないと受信の確認も出来ないので、送り返してからでないと対向試験確認が出来ない)。
送信機2台(正常動作品と不具合品)と受信機が送られて来た。
症状としては
●送信機
新品電池を入れても電源が入らない。たまに入ることもある。
●受信機
電源を入れても一瞬入るが、すぐに切れる。入っても電源ランプや警告音が薄く点灯、フリッカーする。
気温が上がってから症状が顕著になった様に判じます。
とのこと。
●受信機のケースを外す。
TOYOCOM製発振モジュールが使われておりCH1:62.8MHz(送信周波数は4倍の251.2MHz)、CH2:63.1MHz(送信周波数は4倍の252.4MHz)の表示が有る。この機種は電源ON/OFFボタンを押すごとにCH1/CH2が交互に切り替わる。
ハンディ受信機でモニターするが、電波が出ていない。3端子レギュレータらしいチップ部品の出力を見ても2V程度しか出ていない。CPUクロックのセラロックも発振してない様だ。
何故かカスタムLSIの仕様がRCS-250とRCS-MM2の2種類有り、抵抗ジャンパー有無の差が有った。
今回の様に正常品は有ると比較出来て診断しやすい。正常品は3.3V出ている。隣にある同一形状素子は操作した時だけ、電圧出力される様だが、これの出力が出ていない。半田補強や、接点復活剤を塗布してみたら何故か、動作するようになった。しかし、OFFしたのに暫くしたら、電池が消耗してしまったので、消費電流を測定すると、OFF状態でも1.16mA流れている(正常品は0.15mAとなっている)。
電解コンデンサ(47uF/16V)周囲のレジストが膨らんでおり、擦ると簡単に剥がれて銅箔が腐食している。どうやら劣化により電解液が漏れ出した様なので、取り外して交換した。
すると、OFF時に0.18mAと減り、正常品に近くなった。
電流変化を見ると
ON:8mA(電波を出すので)→3.2mA(電波は停止)→操作:9mA(電波送出)→OFF:1.5mA→6.2mA(何故か数秒間流れる)→0.18mA(完全停止状態) となっていた。
ハンディ受信機でモニターさせて送信機を離していく。正常品、不具合品、CH1,CH2を試したがどれも20m程度で、差が殆ど無かったので正常に戻った様だ。電池もOFFで4時間程度放置したが電圧低下は見られなかった。
ID:26F4を変換ツールで確認してみた。
16進数に26F4を入力し、変換ボタンを押すと2進数に表示される。
H:00100110、L:11110100 と確かに合っている。
●送信機のケースを外す。
入力ヒューズにDC24Vを印加するが、表面のLEDが全然点灯しないので、出力電圧を確認する。前回での調査資料が有り、DC24VとDC5Vを出力するはずだが、数Vしか出ていない。フライホイールダイオードは正常の様だ。IC(NJM2355)の端子電圧を測定するがこれも正常な動作をしていない。
NJM2355_J.pdf」をダウンロードが不良かもと判断して、入手先を検索する。いつも利用しているところでは見つからない。
株式会社チップワンストップで在庫が有ることが判り早速発注した。
部品到着を待つことにして、ICは取り外し(というよりスルーホールで端子が簡単に外れないので、モールドを破壊)して18P-DIPソケットに交換した。
周囲を見ると、電解コン1箇所が送信機と同様レジストの膨れが見られたので外して見る。やはり、電解液が漏れている様だ。105℃仕様の手持ち品に交換する。
【6/27】
注文していたIC(NJM2355D)が届いたので、予めソケットに交換した部分に差し込んでみるが、正常な電圧が出ない。そのうちに焦げ臭い匂いがしてくるので、基板を触ってみると、レジスト剥がれで交換したコンデンサが過熱している。両端の波形を見るとスイッチングのリップルがかなりある。スイッチング周波数発生部のCT端子波形を見ると、綺麗なノコギリ波が観測される。
このICは使った実績が無く、周辺部品も全てチップ部品で、交換も困難なので、依頼者に了解の上で手持ちのaitendo製LM2576モジュールキットを2台組み立てて、出力電圧を+12Vと+5Vに調整する。
実装スペースを何とか見つけて2階建てで実装する。
振動対策として、電解コンデンサとトロイダルコイルは基板に接着固定する。
配線して、動作確認する。といってもこのタイプは外部機器が接続されていないと、受信確認が出来ない。
前回修理した同機とLEDの表示は同じになったので、単体では動作している様だ。消費電流はDC24V入力で120mAとなっている。
単体で受信確認出来る方法を探してみた。
受信モジュールから出ている2端子ナイロンコネクタの本体側端子をオシロで確認すると、電波の無い状態では低周期の矩形波が観測されるが、受信出来た(と思われる)状態で+5Vまたは0Vに固定される。CPUまでは動作している様なので返却する。
7/1メール連絡が有り、問題無く動作したとのこ。
無事に動作し続けてくれることを願う。