新空港線(蒲蒲線)の建設について区民に説明会を開くことを求める陳情が提出されましたが、継続審議になりました。説明会するかどうか、のんびりと考えるつもりなんでしょうか。
当初示していた予算から金額もあがり、東急JR蒲田と京急蒲田の間を結ぶはずだったのが、いつの間にか、埼玉と羽田空港をつなぐ一大鉄道網の構築に変わってきています。
ネックになっているのは財源で、東京都と国と大田区で協議中と言いますが、都区財政調整の交付金に組み込むかどうかの議論だそうで、組み込まれても組み込まれなくても東京都と23区の財源割合は変わらないので、23区間の財源の分捕り合戦になります。
それどころか、インフラ財源を交付金に組み込むことは、これまでの社会保障財源を相対的に減らすことになります。
以下、説明会をすべきと主張した理由です。
29第38号「新空港線(蒲蒲線)の建設について区民に説明会を開くことを求める陳情」に採択を求め、討論いたします。
この陳情は、
大田区が出しているパンフレットには、矢口渡駅から東急蒲田駅までの地下化し、それを京急蒲田駅まで延伸すると書かれています。それだと、現在の池上線と多摩川線の駅である東急蒲田駅と京急蒲田駅をつなぐことにはならず、新たに作る東急地下駅と京急蒲田駅がつながることになると読み取れます。これでは、新空港線(蒲蒲線)の発端でもある、JR蒲田と京浜急行蒲田駅間の800mをつないでほしいという区民の願いをかなえることが出来ないのではないか、という心配もあり、大田区がこの蒲蒲線建設によって何を目指しているのか説明を求める
陳情です。
概算事業費も、当初の1080億円から1260億円と約17%2割程度増えていて、莫大な金額です。
【経済利益から決まる日本の予算編成方針】
2001年に省庁再編があり、同時に経済財政諮問会議ができました。
法令を遵守し、執行してきた規制省庁の上に内閣府を置き、いわゆる政治主導の形を作ったのが、省庁再編と経済財政諮問会議の存在です。経済財政諮問会議は、内閣府設置法の規定に基づき予算方針を定める機関で、同時に、経済と財政の基本方針を定めます。
つまり、今の日本は、経済利益から逆算して基本方針が定められるようになっているのです。
私が当選したのが2003年で、かつて、経済効果といえば、税収までをしめしていたと記憶していますが、いつの間にか、売り上げ総額、つまりはGDPを経済効果として示すようになっています。今のアベノミクスもそうですが、投資利益を経済効果の指標としているのです。
【公営交通機関無き時代の、営利目的交通事業の心配】
今回の陳情は交通に係る陳情ですが、報告にもある公共交通が示している通り、コミュニティーバスやタクシーまで含め公共交通になっています。
交通機関は、投資すれば、その費用は運賃に転嫁されます。ホームドアも、駅舎の改築も、やれば便利で快適になりますが、その分は、鉄道事業者のボランティアではなく、運賃で回収されます。
国鉄が民営化されて以降、日本の交通機関は、自治体が運営する交通機関を除き、営利目的で運営される事業になりましたから、公共交通だから、設置すべきにはならないのです。
【社会保障の責任主体大田区、国が行うような強大なインフラ投資に取り組むべきか】
そのうえ、鉄道は公共交通で、公益性があることから、莫大な税金が投入されますが、税収には限りがありますから、インフラ投資すればするほど、社会保障への投入額が削られることになります。
財調算入されれば、その分社会保障費が削減されないか心配です。
私は、蒲蒲線は、人口減少社会において、財政も厳しくなる中、社会保障の責任主体である基礎的自治体大田区が取り組むべき事業ではないと考えています。
【二転三転する事業内容、財政負担】
しかし、区民に京急蒲田と東急JR蒲田を結ぶ蒲蒲線と言いながら、当初の説明とは異なる路線計画になり、財政負担の在り方も変わろうとしているにもかかわらず、区民への説明はあまりにも不十分です。
厳密には京急蒲田と東急JR蒲田を結ぶと言えなくなっている蒲蒲線だから、新空港線とネーミングを変えたのではないかと邪推したくなります。
【不足する情報提供、求められる説明会】
たとえ、国が投資家利益のための予算編成を行い、その流れで行われようとしている新空港線計画だとしても、大田区長は、大田区民のため、独自で説明会を行うべきです。
大田区は、イベント会場で説明してきたと言いますが、イベントのついでの説明では、蒲蒲線について知りたい区民には説明できません。
民間事業者の営利活動に大田区が税投入し、積極的に事業推進するのですから、推進したい主体だけでの合意形成でなく、十分な決定前の区民への説明と合意形成が必要です。
説明の場で、この計画で何が行われ、それによる区民への利便性や、税収含めた経済効果、デメリットなどを詳細に示すとともに、区民の疑問に答えるべきであり、採択を求めます。