goo blog サービス終了のお知らせ 

いのしし くん。

政治、経済から音楽全般の評論
ultimate one in the cos-mos

憲法改正草案。 a draft of a constitutional revision

2012-04-28 19:36:44 | 日記
 (1)戦後、長期政権を維持してきた自民党には経済大国としての存在感を背景にして、米国から押し付けられた憲法の自主改正論が国民主権の本来の回復だとの主張となってきた。
 自民党が政権末期に保守色の強い若い首相が就任した時に、美しい国日本とか言って憲法改正を選挙の争点にしようと盛んに主張していた。

 09年民主党による本格的政権交代で野党となって当然のように自民党から政治のダイナミズム(dynamism)は影を潜めて、反対のための反対の本当の旧時代野党に回帰してしまっていた。

 (2)そうこうしている内に、突然のように自民党が昨日、憲法改正草案(a draft of a constitutional revision)を発表した。

 消費税増税国会の中で内閣支持率の低迷、民主党内の不統一を盾に解散総選挙を目指す自民党は消費税増税(10%引き上げ)論を先がけて主張してきただけに選挙争点とならずに、かえって消費税増税に過半数が反対する国民の反発をモロに受けることも考えられて、対政権色を鮮明にするための憲法改正草案の発表という見方が強くて、いよいよ解散総選挙モードへの対応というところだ。

 (3)この自民党の憲法改正草案は保守系色、保守回帰(conservative revolution)を鮮明にして政党色を強めているが、表現力が乏しくてまるで右翼全体主義国家の未熟さを想定させる危うさだ。

 現行憲法の「前文」は、国際平和協調思想を基本に文学の薫り高い文章で表現されて特に名文と言われている。
 「平和と正義を希求する国際社会において名誉ある地位を占めたい」、「国際紛争を解決する手段としての戦力はこれを保持しない」と国際平和思想主義の基本理念を述べている名文だ。

 (4)自民党が昨日発表した憲法改正草案(要旨)の「前文」では、「長い歴史と固有の文化を持ち、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、和を尊び家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する」とある。

 平和憲法に慣れ、グローバル社会、情報共有化自己管理社会に親しんだ現在国民にとっては、セピア(sepia)色の国家観だ。
 天皇を国家の元首(第1条)とし、国旗(日の丸)、国歌(君が代)を尊重しなければならない(第3条)と続き、橋下市長が進める厳罰化の教育条例思想を想起する危うさだ。

 (5)第9条では現在の自衛隊を国防軍として、軍隊機能を持つことを鮮明にし自衛権も明言した。戦前の保守思想主義を鮮明にした自民党の憲法改正草案は、仮に実現すればかっての侵略戦争の被害当事国アジア諸国には強い警戒感と攻撃材料となることがあきらかな保守回帰思想に彩られている。

 草案全体を通して統制色が強く打ち出されて、わかり易い文言、表現、説明に終始していないところも改正方法論、効果に乏しくて、保守色を一層際立たせている。

 (6)自主憲法改正を長年のテーゼ(these)としてきた自民党だが09年に民主党に政権を取って代わられて、今や両党とも政党支持率は10%台と低迷したままの既成政党不信時代だ。

 民主党政権との区別、差別化を狙って自民党色を打ち出せないでいる野党埋没の中での焦りも感じられて、この草案はもっと手直し、見直しが必要な粗い内容のものだ。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする