(1)岸田総裁、首相誕生をふり返ってみると、昨年夏に当時の菅首相が二階幹事長の支援を受けて総裁再選に意欲を示しながら、党内からの二階幹事長の長期在任の反発に菅首相の国民支持率の低迷を受けて突然菅首相が9月の総裁選への立候補の見送りを表明した。
これにいち早く岸田前政調会長が二階幹事長の長期在任を想定した党役員の任期制を主張して総裁選への立候補を表明し、第2派閥麻生派、第3派閥茂木派の支持を受けて岸田派と3派連合を結成して総裁選に臨むことになった。
(2)最大派閥の安倍派は安倍元首相会長が自身の考えに近い無派閥の高市元総務相をかついで総裁選に臨むことになり、これに最大派閥としても一致結束して行動することにもならずに党内の動きも岸田総裁実現に向けて加速することになり、総裁選では2位高市候補、当初は話題先行した3位河野候補を引き離して岸田総裁、首相誕生となった。
(3)最大派閥安倍派に安倍元首相以外に有力な総裁候補がいないことも追い風となって、岸田総裁、首相実現の大きな要因となった。その安倍元首相以外に有力な総裁候補のいない同派閥内事情が今、安倍元首相会長を銃撃事件で失って立て直しの次期会長選びが難航している。
一旦は安倍派をまとめてきた塩谷元文科相の会長案が有力になったが、将来の首相候補たりえないことから若手議員から反対意見が多く出て白紙となり、派内調整が難航して当分の間は最大派閥の会長を置かないことになった。
(4)安倍派は党内最大派閥であり結束して動けば影響力は大きいが、安倍元首相を失って求心力を失い何人かの若い大臣、党役員、参院役員が将来の首相候補を目指して思惑が錯綜して派内がまとまらずに他派閥からはそのうち安倍派分裂の観測も出ている。
(5)安倍派を率いてきた安倍元首相は大企業、富裕層優遇政策のアベノミクスの大胆な金融緩和策でデフレ脱却の経済成長論を目指した強い保守思想主義者であり、成長と分配の好循環による厚い中間層実現を目指す岸田首相の理念、思想とは相容れないところも多く、岸田首相、岸田派とは距離が近いとはいえない。
(6)安倍元首相会長の求心力を失った最大派閥の安倍派が今後どうなるのか、どう動くのかは支持率が20%台の「危険水域」に急落した岸田首相、内閣にとっても気になるところであり、今後の政権維持に向けても影響力を持つ。
(7)しかしそれは自民党内の権力、勢力図の問題であって、岸田首相、内閣に支持率20%台の数字を突き付けた国民にとっては関係のない話で、自民党も野党も国民が求める、必要とする安定政治の実現に向けてそれぞれに何が必要か、求められているのかを真剣に議論し、考えなければならない日本の政治状況だ。