(1)米国の影響力の低下がはっきりとみられたのが、世界的な石油暴騰(OPEC+が利益保護のため減産政策)によるガソリン価格高騰に対して車社会の米国バイデン大統領が中間選挙を迎えて国民の不満を抑えるためにOPEC+に石油増産を要請したが、OPEC+はウクライナ戦争での先行き不透明感から減産維持で応えたことにみられる。
(2)米国が石油産出国の中東軍事関与から手を引いたことが影響している。今回の米国中間選挙はガソリン高騰に高いインフレ社会で民主党バイデン政権への不満、批判の高まりの中で、共和党トランプ前大統領が自身の考えに近い、あるいはトランプ信奉者といわれる共和党候補者200名近くを積極的に応援して再びバイデン民主党にトランプ共和党の対決になった。
(3)中間選挙戦はバイデン政権のインフレ対策への批判を強めたトランプ前大統領が応援する共和党候補者の優勢が伝えられながら、昨日の投開票では下院では共和党優勢が伝えられながら民主、共和党ともにまだ過半数に達しない混戦で、上院は同数の接戦が続いて(報道)勝敗結果は先に延びる見込みで、当初予想された共和党優位も議席獲得数はそれほど伸びなかった。
(4)2020年大統領選を不正があったと主張するトランプ前大統領とそれに同調して応援を受ける共和党候補者の問題発言が影響しているとの見方はあり、接戦の共和党候補者が「これで負けたら99%不正があったと考えざるを得ない」、「きちんと投票がカウントされているのか、ここにいる一人一人が確かめよう」(報道)ではトランプ前大統領が煽動したとされる米議会襲撃事件をみた国民もまたかのうんざり感があるのではないか。
(5)バイデン大統領も民主主義の危機を訴えて、報道でも米民主主義が瀬戸際を迎えているとの指摘もみられる。根拠のない主張で自らの不利益を否定する、敗北を認めないやり方は、完全ではないけれど相対的確率論により制度として確立してきた方法論まで否定することで、それでは賛成、反対、不満も含めた民主主義論、国民総意の社会論が成り立たない。
(6)これまで米国の経済繁栄効果の恩恵を受けてこなかった白人マイノリティ層が頼り、つくったトランプ現象ではあるが、パラドックスとして米国自由主義のエネルギーを否定することにつながり、問題提起はしたが分断は米国社会の危機だ。
(7)米巨大IT企業群もアップル(1%増)以外は減益となり、マスク氏が買収したツイッター社は買収額利払いの負担増で社員半数がリストラ対象となり、日本法人の社員も多数含まれて、メタでは1万人以上(全体の13%)がリストラ、採用凍結(報道)という業績不振に見舞われている。
(8)米国が揺らいでいる(america waving)。日米同盟、経済関係のつながりの強い日本としては、米中間選挙結果でバイデン政権が善戦したとはいえ弱体化するだけではなく、米国政治、民主主義が正念場を迎えており、米国追随だけではおさまらない。