(1)岸田政権も推し進めていることもあり「リスキリング」(reskilling)という言葉をよく目にし、耳にする。「学び直し」と言っているが、かっても「リカレント」(recurrent)と言って社会人の「再入学教育」が注目、重視された。
(2)基本的には同じことを言っているのだが、リカレントは鉄鋼、建設、製造業中心の高度経済成長時代の中で社会人一般としての管理能力、職業能力の再開発、向上を目指すものに比べ、リスキリングは情報化、IT、AI時代の社会人の細分化された専門的個別分野の技術力、能力の開発を目指すものだ。
(3)日本は情報化、IT、AI時代に世界から遅れて、DX人材が不足、育たない問題を抱えている。ようやく政府もデジタル庁を設置して省庁横断的行政改革に取り組んでいるが、東大も中高生、社会人を対象に「メタバース工学部」を開設してリスキリング講座、DX人材の開発、育成に乗りだした。
(4)大学もかっての閉鎖的体質から少子化時代を迎えて社会、地域に広く開かれた大学として大学の持つ専門的、先進的、開発的知識、能力、技術を伝え、活用する変革に取り組んできた。東大「メタバース工学部」は仮想空間で講座を開設し、どこに住んでいても参加できるリスキリング・イノベーションで指導陣も「最近まで企業で実践の場にいた人が講師」(報道)で同講座のスポンサーも兼ねている。
(5)情報化、IT、AI技術は社会、企業構造を変えているが、大学教育をも変えようとしている。大学もかっては専門的技術能力、開発力、知的財産を活かして大学発ベンチャー起業の促進に取り組んだが、資金力、人材力に問題があり定着せずに、リスキリング講座、メタバース工学部構想はベンチャー起業への期待も大きい。
(6)政府のデジタル庁はなかなか成果が出ずに、政府は国民個人の資産を全管理し税収率を上げるマイナンバーカード取得が進まないことから、国民健康保険証と一体化(紙ベース廃止)することを唐突に発表して混乱、物議を招いている。
(7)政府にこそ、リスキリングが必要だ。リスキリングの流れは大学の国際化に乗り遅れた大学が社会人の職業能力の再開発、DX人材開発するものであり、一方で入試改革でそもそも高い能力を持つ学生を集めて高度な学問を進めようという安易に手抜き教育の反比例に向かうものであり、方向性が定まらない。