(1)今年は2月の露によるウクライナ軍事侵攻に始まって世界的な石油高騰、急激な円安により4月と10月に多品目の一斉値上げが続き、息苦しい1年を過ごしてきた。来年にかけても電気、ガス料金の大幅な値上げが予定されており、国民生活には厳しい負担増が待ち受けている。
(2)40年ぶりの物価上昇率3.6%となり、最近のGDPは4四半期ぶりにマイナス成長となり個人消費が伸びなかった(前期比0.3%増)ことが原因だった。物価値上げはこれまでは買い置き、買い控えを防ぐために直前になってのそれぞれの事情に合わせての値上げ発表が多かったが、今回は昨年末から今年4月の一斉値上げの発表があり、さらに10月からの2度目の一斉値上げに来年の影響力の大きいインフラ、電気、ガス料金の値上げまで発表されており、従来の値上げスタイルとは異なった対応が目につく。
(3)世界的な石油高騰による流通価格の値上げに円安の輸入原材料の高騰でほとんどの商品価格にわけへだてなく影響したことが事前予告の一斉値上げにつながった。こうしたことが国民消費者にとっては年間を通して物価値上げの圧迫を受けて、前出のように個人消費が伸びなかったGDPマイナス成長の要因だ。
(4)中にはコロナ社会で通勤者、乗客が減少した鉄道会社がもっと前に値上げをしても良かったが物価一斉値上げに合わせて乗車料金の値上げに踏み切る便乗値上げのようなものもあって、ガソリン価格の高騰も価格設定構造(毎日変動、近隣GS比較検討)の検証もなく闇雲に政府が石油元売りへの補助金で支援するという対策は、中間検証では補助金が消費者対策ではなく企業損益の補てんに使われていた事例(報道)も報告されて、時期的一斉値上げの盲点ともなった。
(5)物価値上げが従来の買い置き、買い控えを防ぐ直前型からあらかじめ時期を定めて事前予告型一斉値上げに代わったのは、消費者の輸入商品への依存、購入志向が増えたことと企業の原材料を輸入に依存する構造改革が影響していると考えられ、急激な円安による輸入価格の変動、高騰で企業の対応力、即応力がむずかしい事情もあげられ、日銀の金融緩和持続の影響も考えられる。
(6)物価値上げは来年に持ち越されて、値上げの息苦しい新年を迎えることになる。