(1)岸田首相が防衛費増額で軍備強化を急いでいるのは、米国筋から近いうち(数年単位)に中国の台湾軍事関与の可能性があるとの情報分析があるのではないか。米ペロシ前下院議長の訪台時には中国軍は軍事演習として日本のEEZ内にミサイルを撃ち込んで、与那国島近くに着弾した。
(2)台湾有事は日本の有事だという実感が現実のものとなる事態だ。米空軍司令官が「私の直感では2025年に中国との軍事衝突が起きる」(報道)と警鐘している。軍事情報を直感で判断、警鐘されても不安を増幅するだけであってはならないことで困るが、中国へのけん制の意味もあるのだろう。
(3)岸田首相の防衛費増額も114兆円の過去最大の来年度予算案が計上されながら、財源として盛り込まれずに増税に頼るというところが緊急性、非常性を思わせるもので、米国からの近いうちの中国による台湾有事情報への備えに対応するもののようにみえる。
反撃能力(敵基地攻撃能力)の整備も公然と中国敵視政策とはいえないが、中国の台湾軍事関与に備えたものだろう。
(4)中国習主席は異例の3期目体制を側近で固めて、香港統括強化のあとは台湾解放に向けて実力行使(軍事関与)を進める段階に入ったとみられる。民主主義体制の台湾は米国との関係、つながりも強く軍事支援もあり、中国が台湾軍事関与に及べば米国、米軍が台湾擁護に動き、沖縄米軍基地からの米軍出撃も予想されて、日本も台湾に近い与那国島など防衛のために自衛隊、防衛力の強化が必要となり、そうした台湾を巡る軍事緊張を想定した日本の防衛力増強については国民説明、理解には軍事背景をあきらかにしたくない事情が岸田首相の一存、自民党内論議だけでの決定で防衛力強化、増額、財源としての増税を進めている要因と考える。
(5)日本としては中国との平和、安定関係を維持したい、台湾有事は日本の有事との危機感もあり、中国との良好関係を考えての防衛力強化、増額の二本立て作戦(a double standard operations)といえる。