(1)IMFの分析予想に続き国連も23年の実質成長率は米英仏独が急激に鈍化する中で、日本は1.5%と堅調な伸びになるとの見方を示した。これまで大胆な金融緩和策で円安物価高を招いてきた日銀黒田総裁は4月に任期終了を迎えて、岸田首相は「人は変える」と述べて2月に日銀新総裁を決定する方針(国会承認が必要)を表明している。
(2)大胆な金融緩和策の後遺症(円安物価高、政府の借金財政拡大、日銀の大量国債買い入れなど)の出口論が必要な事態に、これまで大臣任命人事でさんざん裏切られてきた岸田首相の日銀新総裁人事が出口論とともに注目される。
(3)日銀の金融政策決定会合は総裁、副総裁、外部の専門政策委員の多数決で決められるものだけに、現在のリフレ派黒田総裁のもとでの政策委員では昨年末金利0.5%に引き上げに対して1月会合では「日銀の緩和姿勢は変わらないことを丁寧に説明していくべきだ」(報道)という意見も出て、新総裁のもとで4月からどういう金融政策の方向性が示されるのかわからない。
(4)日銀新総裁人事の国会承認でも緩和策、出口論を視野に入れて野党からも厳しい注文も予想されるだけに、岸田首相も鬼門(the ominous direction)ともいえる人事、日銀新総裁人事の決定を迎える。
防衛費増額の増税、子育て支援の財源の社会保険料引き上げで企業、国民への負担増が予想される中で、日銀の方針が金融緩和から金利引き上げに転じることになれば円安物価高の緩和にはなるが輸出産業には逆風となり、大量の政府の国債償還率も増えて、金融機関からの借り出し利率も増えて10年近くの日銀の金融緩和策に慣れた経済社会では急激な変化への対応も必要だ。
(5)これまで大臣任命人事でつまづく岸田首相の日銀新総裁、政策委員の人選に金融政策とともに注目が集まる。
冒頭の国連の報告書では米、EU、日などの露経済制裁の中での22年の露のGDP成長率がマイナス3.5%と当初予想のマイナス10~15%の大型悪化にはならなかった。プーチン大統領が米、日などの経済制裁は効果がないと言っていたことが少しは現実のものとなった。
(6)自由主義、資本主義社会と違って権威主義、専制国家体制の中では経済の国家、国民統制も厳しく同体制国家同士の経済協力もあり、露への経済制裁も予想した効果はあがっていないとみられる。
プーチン大統領のウクライナ戦争の強気の発言の裏付けでもあり、これに米、EUはウクライナへの戦車など兵器の支援強化を加速して戦争拡大が懸念される事態だ。