(1)年が明けるたびに台湾を取り巻く情勢は緊迫を増していく。昨年、当時米ペロシ下院議長の訪台以来、中国軍機による台湾周辺海峡の侵入行為が激しさを増して緊張が高まっている。軍事演習として中国本土から発射されたミサイルが日本のEEZ内に着弾したこともあった。すぐ近くには与那国島がある。
(2)安倍元首相は「台湾有事、それは日本有事だ」と発言したが、中国軍の軍事演習で現実的な問題となっている。中国軍が日本のEEZ内にミサイルを撃ち込んだのも、日米協力の台湾問題への関与に対する警告の意味合いと捉えられている。
有事は現実的な問題になっているが、備えとは別に中国との平和友好関係を続けるためには中国敵視のような発言は慎重になるべきだ。
(3)それがまた台湾問題のもうひとつの(alternative)外交解決に向けた取り組みの必要性にもなるからだ。中国の外交担当トップに王毅前外相が就任する(報道)ことがわかった。日本の政治体制と違って中国外相は外交機関のNO.2であり、今回その上の外交トップの共産党中央外事弁公室主任に就任した。
(4)王毅氏は駐日大使を務めてその後10年近く中国外相を務めて、本来なら経験、つながりのある日本との外交ルートをいかしての日本との良好関係を築く淡い期待も持っていたが、そこは習主席絶対の専制国家体制の中では日本に対しても原則主義の厳しい対応が目立ち、日本の期待にはそぐわなかった。
(5)王毅氏は習主席の信任が厚いといわれて中国外交のトップに就いて、台湾問題では「中国の核心的な利益の中の核心」(報道)と強調し「超えてはならないレッドライン」があると米国に警告した。今後も習主席3期目の絶対政権の中で習主席の信頼に沿った外交強硬姿勢をさらに強めるものと思われる。
(6)駐日大使を経験したことがかえって中国では日本に対して強硬姿勢をみせる要因でもあるのかもしれない。日本の林外相も親の代からの中国関わり姿勢が問題になったことがある。そこで冒頭の「台湾有事、それは日本有事だ」が年が明けるごとに緊迫、緊張を増してくる。
米国からも近い将来に中国による台湾軍事攻撃があるとの情報報道があり、予断を許さない事態だ。
(7)日米台の連携強化が進んでおり、軍事連絡ルート、現場通話体制にホットラインの必要性も伝えられている。林外相の中国訪問も日中間で検討されており、もうひとつの外交ルートでの信頼、友好関係構築も両国間での不慮の事故を起こさないためにも重要だ。