(1)今、世界は二つの「クラウド」に覆われている。ひとつはIT情報のデータ処理、保存するサービス仕組みの「クラウド」(cloud computing)であり、もうひとつが2国間防衛協力、協議という「クラウド」(cloud)だ。前者は「大きい、大量」という意味があり、後者は忍び寄る軍拡の世界を覆う黒い雲だ。
(2)岸田首相はG7広島サミット開催前にG7メンバー国の歴訪外交を展開している。日仏では安保の連携強化、英国訪問では日英共同軍事訓練の手続き簡略化の円滑化協定に署名した。すでに日豪でも同様の軍事体制が組み込まれている。
(3)日米では在日米軍の統合指揮権をハワイ司令部から在日米軍司令部に移し、自衛隊の統合司令部新設に合わせて部隊運用で日米連携を強める。日米部隊運用の一元化を進めるもので日本の反撃能力(敵基地攻撃能力)の「効果的な日米運用の協力を進化」(報道)させて、台湾有事に備えて中国の核使用に備えた協議も進める。
(4)鹿児島馬毛島(無人島)では日米軍事訓練用の滑走路建設整備工事が始まった。まるで日本を取り巻く一気呵成の軍事化進展で風雲急を告げるかのようであり、国民が知らない間に次から次へとどこまで軍事連携、協議が進むのか、主権国家としてありえないことだが日米防衛指揮権一体化さえみえてくる。
(5)もはや沖縄辺野古問題を通り越して日米軍事連携の黒い雲が日本をアジアを覆いつくしている様相だ。もちろん中国もだまってはおらずに強い警戒感を示しており、反撃能力保有の日米運用の協力に至っては危惧された先制攻撃能力と捉えられかねない使途、運用拡大がみえる。アジアに緊張を増幅して、話が違っているのではないか。
(6)G7広島サミットでは「核のない世界」、軍縮を訴えることが大きなテーマといわれるが、岸田首相のG7国歴訪はまるで世界の軍拡競争を促進するもののように映る。日本の外交が同盟国、友好国優先の2国間軍事協力、協議が目立ち、一方中国、露への働きかけ、外交努力がみられないのはもうひとつの重要な防衛論が欠如して危険な道(dangerous road)といえる。