(1)石破首相がリマで開催されたAPECに出席して米中との初めての首脳会談に臨んだ。中国習主席とは35分、バイデン大統領とは10分程度の短いもので、岸田前首相時代からの関係強化を確認した模様だ。
バイデン大統領とは日米同盟の強化、日米韓同盟の協力を確認し、習主席とは主張の違いがあっても共通の利益を追求する「戦略的互恵関係」、相互の「建設的かつ安定的な関係」構築を確認(報道)した。
(2)あいさつがわりの原則論の申し合わせのようで政治的背景には来年1月就任のトランプ次期米大統領への「備え」もあるのだろう。石破首相がそのAPEC終了の首脳集合写真にひとり渋滞に巻き込まれて参加できずドタキャンになったのは何かを予感させるものとなった。トランプ次期大統領との帰国途中の初会談も国内法を理由にやんわりと断られた。
(3)そのトランプ次期大統領は政権人事を着々と進めて、国防長官にはトランプ氏と同様にTV司会者を起用して「忠誠人」基準を思わせ、それだけで判断してはならないがTV司会者が軍事力で世界最大規模といわれる米軍を率いて国防、軍事で世界に影響力を示すとなれば、一抹の不安もある。
(4)司法長官にはこちらもトランプ氏同様に薬物使用(これはトランプ氏とは関係ない)、ゴシップでなんと司法当局の捜査対象になった経歴があり、トランプ氏の政敵への報復(報道)人事ともいわれる「問題児」だ。
(5)厚生長官には大統領選終盤にトランプ氏側についたケネディ・J氏を起用するが、反ワクチン活動家で科学的根拠の乏しい主張も多いといわれる。
テスラ会長のイーロン・マスク氏を本人が主張する規制緩和、歳出削減のあらたに設置する「政府効率化省」(助言機関)のトップに据えて自らの事業計画を有利に導くバイアスな行動が考えられる。
(6)いやはやトランプ政権の主要高官が多士済々といえば済々、問題だらけといえば問題だらけで普通必要な議会の承認を得るのもむずかしい人事だが、こちらも上下院ともに共和党多数では共和党トランプ次期大統領の思いのままというところだ。
まるでちょっと米国政治コメディドラマを見ているようで、トランプ氏に忠誠心はあったとしても米国社会、世界を相手に物事を進められるのかバイアス(bias)な不安はある。
(7)中国にとってはトランプ次期大統領の政権人事から米国第一、保護主義の戦略的「攻勢」が予想されて、日中の「戦略的互恵関係」の重要性が増してくる政治状況が考えられる35分の日中首相会談だ。