(1)G7広島サミット開幕前に米国政府関係者は、バイデン大統領はG7広島サミットで米国が原爆を投下したことにおわびを表明することはしないと発言していた。G7首脳がG7広島サミットで原爆資料館を訪れる意義、意味については関心が高く、注目されていたが、同時にバイデン米大統領が米国の広島、長崎への原爆投下の責任について発言することについてはまったくといっていいほど言及がなかった。
(2)米国では今でも米軍が広島、長崎に原爆を投下したことに戦争を早期に終わらせる正しい選択だったとの意見が国民の間では多数を占めているといわれる背景がある。
そのバイデン大統領がG7広島サミット初日にG7国首脳がそろって原爆資料館を訪れて、芳名録に記帳したメッセージの要約が報道された。
(3)バイデン大統領は「資料館の物語が平和な未来を築く義務を思い出させてくれるように。核兵器を永久になくせる日に向けて共に進もう」と記帳した。「核のない世界」宣言をしたオバマ元大統領時代に副大統領を務めたバイデン大統領も核軍縮には理解を強めているといわれている。
(4)今回の記帳での「資料館の物語」が何を意味するのか、米軍による原爆投下により10万人以上が犠牲になったといわれる広島での惨事を展示した原爆資料館の展示がどういう「物語」(the stories)なのか、「物語」ですむのかは解釈、意見はさまざまあるだろうが、未来永劫語り継がれる「出来事」としての「物語」として普遍的な教訓を暗示させるものともいえる。
(5)米軍による広島、長崎への原爆投下から78年経過して、「核兵器を永久になくせる日に向けて」のそれが今や現実から遠く離れて、あってはならない教訓としての「物語」として存続しているものとも理解できる。
(6)バイデン大統領としては原爆資料館を訪れて、米軍が78年前に広島、長崎に原爆を投下したことが「現実」のもとして受け入れがたく、「物語」のレトリック(rhetoric)として表現せざるをえなかったのではないのか。
核の脅威を示唆するプーチン大統領に伝える、示す責任がある。