ひびレビ

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「刑事ジョン・ブック 目撃者」を見て

2017-07-10 07:54:45 | テレビ・映画・ドラマ
1985年の映画「刑事ジョン・ブック 目撃者」を見ました。

 父親を亡くしたアーミッシュの親子レイチェルとサミュエル。2人が旅行に出かけた際、息子のサミュエルは偶然にも殺人事件を目撃してしまった。捜査にあたったジョン・ブックは、サミュエルが目撃したのが同じ警察の人間だということを知り、信頼できる人物に相談するも、その人物もまた犯罪に関わっていたことが発覚。
 ジョンは親子を故郷に送り返すも、逃走中に負った負傷が原因で、しばらくその村に滞在することに。アーミッシュの村で暮らすうちに、ジョンは次第にレイチェルと魅かれあうが、そこにも魔の手が忍び寄っており・・・


 タイトルからして刑事物だというのは察していましたが、犯人を追い詰めたり、ドンパチやるのがメインではなく、ジョンとレイチェルたちとの交流がメインとして描かれていたように感じます。
 劇中ではジョンとレイチェルが互いに魅かれあう様子が描かれていますが、そこに言葉は無く、けれども明確に2人が魅かれあっているというのが分かる描写がなされていました。「好きだ」とか「愛してる」とか、そういった言葉を口にするのではなく、心で通じ合っている感じが何とも素敵でしたね。

 時に熱く、時に優しいジョン・ブック。刑事として事件解決に情熱を注ぎながらも、サミュエルに対する優しさや、アーミッシュのルールに従うことも忘れない心を持ち合わせている人物です。特にサミュエルが目撃した犯人を指し示すシーンでは、彼の異変にいち早く気づき、警察関係者だと分かるとその手を静かに下ろさせるのがとても印象に残っています。
 また、とある場面では、アーミッシュの人々に対する観光客の無礼な振る舞いに手をあげることもありましたが、それもまたジョンらしさなのでしょう。

 ただ、だからこそジョンとレイチェルは共に暮らしていくことが出来ないとも感じました。ジョンにはジョンの、レイチェルにはレイチェルの暮らしてきた世界がある。仮にジョンとレイチェルが結ばれたとしても、ジョンがアーミッシュの村で暮らす以上、他のアーミッシュのように、そうした心無い観光客の行動に耐えていかなければならないところもあるかもしれません。果たしてそれをジョンが耐え切れるのか・・・
 反対に、レイチェルたちが都会に行った際も、人々の中には好奇の目を向ける人もいました。そうした視線に耐えることが出来るかどうか。心が通じ合っているとはいえ、共に暮らしていくのは難しい。けれども確かにジョンとレイチェルたちとの間に絆は残っている。事件は解決したものの、どこか寂しさも残るラストでした・・・


 が、そんな寂しさを感じるラストをひっくり返してくれた人がいます。それがダニエルです。ダニエルはレイチェルに好意を寄せていると思われる人物であり、葬儀の時にも傷心のレイチェルを気にかけていました。
 当初、この作品をテレビで見た時はサミュエルが殺人事件を目撃したシーンからの視聴開始だったので、今回改めて視聴して、ダニエルがレイチェルばかりでなくサミュエルも励まし、喜ばせていたことを知り、ますます好きになったキャラクターです。

 最初はジョンを警戒しているような雰囲気もありましたが、納屋作りを通して飲み物を分け与える仲になっています。ここで気になったのは、納屋作りの直前にジョンの傷が大分癒えてきたことを知ると「家に帰るな」と告げたシーン。これは「レイチェルの元には帰るな」という意味なのか、はたまた「元々住んでいた家に帰らず、ずっとここにいろ」という意味なのか・・・

 ダニエルが心無い観光客からひどい仕打ちを受けた際、ジョンは制止を振り切って観光客に一発お見舞いしています。それに動揺するアーミッシュの人に対し、ダニエルはジョンを「オハイオ州の自分のいとこ」だと説明し、かばっているような節がありました。
 ここで明確にジョンに対する感謝の意を表明すれば、決まりを破ったことを称賛しているという風にも捉えられるでしょうから、「他から来た自分のいとこだから、大目に見て欲しい」といった風な発言をすることでかばったのだと私は思います。ダニエルも内心耐え難いものがあったからこそ、このフォローがあったのでしょう。

 極めつけはラスト。親子と別れ、一人車に乗って走り去っていくジョン・ブック。そんな彼が向かう道の先からダニエルらしき人物が歩いてやってきたかと思えば、ジョンに挨拶をする仕草をしていました。その後、ジョンも僅かな間車を止めていましたから、きっとその間にダニエルに対して感謝の言葉を告げていたことでしょう。
 周りは草原。他に聞く人が誰もいない状況ですから、ダニエルはジョンに感謝の言葉を告げたかもしれません。しかし、あの仕草だけでも十分すぎるくらいにダニエルのジョンに対する思いは伝わってきます。多くは語らず、されども心は繋がっている。ダニエルがジョンに負けず劣らずカッコいいキャラクターでした。


 また、最後に犯人グループのボスとの対峙も描かれていますが、その決着が何とも意外なものでした。暴力で物事を解決するのではなく、言葉で心に訴えかけるとは思いもしませんでした。


 そんな映画「刑事ジョン・ブック 目撃者」。楽しませてもらいました。
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