続きです。
大切にしていた大鍋にウンコをされた。この大鍋は母親との絆。それにウンコをされた。「とうせん坊」は激高。一枚歯の高下駄をカツカツさせながら村に下り、家に火を付け、超人的な力で牛馬を絞め殺し、人々を殴り殺す行動に出た。
村を荒らし回った「とうせん坊」は村を出て、越前の東尋坊真で辿りつき、景色が気に入り住みつく。
或る日、東尋坊の先端で宴会をしている村人達がいた。彼らは優しげに「とうせん坊」を宴会に誘う。
人の優しさに飢えていた「とうせん坊」は喜んで仲間に加わり、しこたま酒を飲んで酔い潰れる。
夢の中で母親の子守唄を聞いている中、違和感を感じ目を覚ます。何と「とうせん坊」は縄で体を縛られ担がれ、崖に落とされるところだった。
「とうせん坊」は涙を流し、「おっかぁー」と叫びながら崖下に消えた。
それ以来、東尋坊で吹く風は「とうせん坊」と呼ばれ、「とうせん坊」の怨念として恐れられるようになった。
次に「島の坊」の話です。
今の岩手県、下閉伊郡の山田の海岸に洞窟があり、そこに何時の日からか「島の坊」なる気性が荒い坊主が住んでいた。この「島の坊」、何故か桐紋が付いた古い大鍋を大切にしていて、何時も背中に背負い村に出ては威張り腐っていた。
そして或る時、「島の坊」が留守中の洞窟に村の者が入り込み洞窟内を荒らし、「島の坊」が大切にしていた桐紋の鍋にウンコをする悪戯をした。
帰って来た「島の坊」は怒り心頭。村に出て家を叩き壊し、火をつけるなどの狼藉を働いた。
そこに役人が大勢の捕手を連れて「島の坊」の捕縛にかかる。
これに「島の坊」は更に激怒。「俺の大事な鍋にウンコをしたヤツを捕まえないで、俺を捕まえるとは何事だ。この木っ端役人が」と怒りに震えた。
「島の坊」は大きな鉄棒を軽々と振り回し、高下駄ながらも家の屋根を飛び回り大暴れ。役人は更に捕手を増強。村人も役人に協力し「島の坊」を取り押さえ、崖から「島の坊」を放り投げた。その後、海が時化となり何日も続いた。
村人達は「これは島の坊の祟りだ」と騒ぎ出し、急いで「島の坊」を祀る神社を建立。「島の坊」を大漁の神として大切に祀った。
もう一つの説では、「島の坊」を役人、捕手、村人大勢で撲殺。大島に遺体を埋めたが、それから魚が取れない日が続いた。村人達は「これは島の坊の怨霊の仕業だ」と騒ぎ出し、大島の「島の坊」の遺体を掘り起こし、漁民達の神として大杉神社に祀った。
続く。