因幡の白兎の物語に出てくる鰐。その正体は何か。ずっーと、ずっーと考えているのです。何だかんだ言って30年近く。
「日本に鰐はいない。だから鰐はサメだろ」と普通の人は思う筈です。しかし、鮫では有りません。古事記にはサメの事を「狭目」と表記しているのだから。
サメを「鮫」と書くのはサメは魚類なのに交尾をするから。だから「魚が交わる」と書いて「鮫」なのです。
古事記に「狭目」と書いているのはサメの目は猫の目の様に黒目が狭いからです。猫は眩しい日中は黒目が縦長になっていますが、サメにもそんな目をしている奴がいます。多分、「鮫」の字が浸透する前は「狭目」だった。日本では元々サメは「狭目」と書いていたのだと思います。
その一方で古事記に「鰐」なるモノが書いてある。サメは「狭目」だから「鰐」はサメじゃない。だったら「鰐」とは何なのか。
以前にも書いたと思いますが、この質問を某宗教大學の仏教の教授にぶつけた事が有ります。今から21年前、31歳位の時です。当時、高齢者向けの雑誌社で編集者をしていて、原稿を取りに行ったついでに聞いてみたのです。
教授の答えは「多くの鰐を一列に並べて、その上を兎がピョンピョン飛んで渡った。そんな芸当が出来るのはイルカだ。イルカは頭がいいから水族館のショーでも同じ事やっているし・・・・・・・」っと、寝ボケだ事を言ってやがりました。そんな訳無いだろ。イルカは海豚だし。ふざけている。
この教授、結構高名な人です。坊主頭の坊主見習いの学生が甲斐甲斐しく秘書みたいに働いている中聞いたのですが、古事記の「狭目」の事も知らなかったし、真面目にイルカ説を語っているので、「駄目だな日本の仏教界は」と思っちゃいましたわ。今考えると仏教の教授なのだから、古事記の事を知らなくても仕方ないのかも知れませんけど。
それではと私が考えて「鰐」の正体を見つけてやる。釣師の名にかけてと思って今日に至ってたのです。
答えは出ました。鰐とは和邇氏であり、兎は宇佐氏だと。和邇氏は大国主の前の地主神家系。古事記で大国主を殺そうとした大国主の兄達だと考えます(実際は反対でしょうけど)。そして宇佐氏は八幡神の家系。渡来系と考えます。
宮城県の根白石の宇佐八幡神社の狛犬は兎です。その事からもそう思います。
そして大国主も渡来系だから兎を助けた。大国主はスサノオ命とは断言しませんが、渡来系のスサノオ命の家系だと私は思っています。
でも生物として鰐が存在している可能性も十分ある。ベトナムにはワニの背に乗ったウサギの話もある。ベトナムにはワニはいるからワニは鰐で間違いない。
ベトナムから因幡の白兎の伝説が伝わった可能性もある。それは今回は置いときます。日本独自で考えると日本にはワニはいない。だったら古事記の日本の鰐とは一体何なのだ。
日本ではサメをワニザメとも言います。狭目と鰐鮫、別種ではないのか。
そう思ってに多くいる変わったサメを探しました。いました。ワニザメと思われるサメが。そのサメの名前はシュモクザメ。洋名はハンマーヘッド。
「シュモク」とは「撞木」の事で、「鐘とかを叩く棒の仏具」です。トンカチみたいなヤツです。頭の形がその撞木に似ているから「撞木鮫」、シュモクザメと呼ばれるようになった。
出雲の海にもにもシュモクサメは生息しています。地元でもシュモクザメを含めてサメをワニザメと呼んでいるそうですが、シュモクザメがワニの正体だと思えます。
宮城県にも津波で流された十一面観音をサメが背負って持って帰って来たと言う伝説がありますが、どうもシュモクザメには独自の信仰があるそうです。
サメは交尾もしますし、卵ではなく幼魚をそのまま産みます。魚なのに鱗がない。魚で唯一霊魂があるとも考えられています。その神秘性から信仰が生まれ、シュモクザメの特異な姿から王冠を被ったサメの王と考えられた。
では何故、シュモクザメがワニなのか。
以前書きましたが、竜の正体はコブラです。そして竜の字は冠を被った蛇を表す。インドのコブラはただの蛇ではない。故にコブラのいない中国に仏教が渡ってくる時、コブラの表記が出来ず、誤訳されて竜となった。
竜は中国では架空の動物。その姿は知られていない。そこで王符と言う人が紀元前500頃に現在の龍のデザインを考案した。龍の字は竜を装飾として用いた意味で登場した。
シュモクザメと普通のサメの姿は別種の様に違う。同じサメとは思えない。しかもシュモクザメは、当時日本にいたサメの中でもっとも大きく気性が荒い(当時は寒かったから、ホウジロザメはまだいなかっ筈)。だからコブラと蛇が分けて考えられられたのと同様、サメと分けられてワニと呼ばれていたのではないか。
以上、ワニを生物として学術的に考えたのなら、シュモクザメがワニであると考えます。あくまでも生物的にです。
そしてその神秘的なシュモクザメに対し、信仰を持っていたのが海人族だった和邇氏ではないでしょうか。
これが私の精一杯です。今の所はそう考えています。
ではでは。