ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

アロエ屋さんは何処へ

2007-06-26 09:28:13 | 日記
馬鹿と煙は高いところが好きだと言う。困ったことに、私は高い所が好きなだけでなく、高い所から飛び降りるのも好きだった。

東京育ちの割りに、比較的緑の豊富な町で育ったため、木登りは得意だった。実のところ、登るのはさほど難しくはない。難しいのは降りることだ。とりわけ降りる間際、地上から3~4メートルくらいの高さが危ない。気を抜いて、滑って墜落することが多いからだ。

高さを上手く見極めて降りるのが、木登りを安心して楽しむこつだと思っている。私はわりと足腰が頑丈な子供だったので、飛び降りるのは得意だった。この自信が後で事故につながった。

年に一度の墓参りの帰りは、親族一同で浅草へ行くのが慣行だった。浅草寺で御参りをして、近くの天ぷら屋での会食がお決まりだった。その浅草寺でのことだ。

賽銭箱に小銭を放り投げ、適当にお祈りした直後だった。素直に階段を下ればいいものを、持ち前の遊び心がムクムクと持ち上がり、飛び降りることにした。

浅草寺はかなり大きなお寺で、賽銭箱のある壇上から階段の下まではけっこうな高さがある。この高さなら飛び降りたことがあると考えた私は、助走をつけて飛び降りた。

着地した瞬間、これまで経験の無い痛みが脳天まで響いた。「ウキャキャ~」とサルみたいに声をあげ、地上を跳ね回った。妹たちがケラケラ笑っている。そりゃ、変に思えたのは無理ない。私自身が、自分の行動を理解できなかった。とにかく、痛くて痛くて、じっとしていられなかった。

原因は石畳だ。私が普段飛び降りているのは土の上だった。石と土では堅さが違う。足を引き摺りながら、家族に追いついたが、どうもまともに歩けない。こんなとき、私のおばあちゃんは厳しい。が、あまりの痛がりように、足を挫いたと思ったらしく、アロエ屋を探してくれ、アロエの葉を裂いたやつを足に貼ってくれた。ひんやりと気持ちがイイ。

しかし、帰宅しても痛みがいっこうに引かない。結局数日後医者に行ってレントゲンをとると、足のかかとの骨にひびが入っていた。痛いはずだわな。石膏で足首を固められる羽目に陥り、大いに後悔したことは言うまでもない。

ただし、治るとすぐに忘れた。その数年後、何を思ったか、下駄をはいたまま、3メートルあまり飛び降りる馬鹿をやっている。下駄がパッカリ割れて、私は痛みで飛び回っていた。やっぱり骨にひびが入った。またも石膏で足を固められ、親からおおいに呆れられた。

さすがに懲りた。以来、飛び降りることは控えるようになり、もっぱら登ることに専念した。

実は数日前、仕事で浅草界隈に赴いた。少し早めに行き、懐かしい町並みを探索したが、件のアロエ屋は見つからなかった。アロエの葉は、捻挫の患部を冷やす他にも、いろいろな薬効があるとされて、地元の人々に愛用されていたはずなのだ。しかし、無かった。出店の方に尋ねてみると、だいぶ前に引退したとのこと。出店のおじさんが「保健所がうるさかったからなぁ」ぼやいていたのが気になる。

最近ではアロエ・ヨーグルトなる商品もコンビニの店頭にさえ並ぶのに、出店での販売はあまり好ましくないとされたらしい。もしかしたら医療法がからむのかもしれない。捻挫のシップにアロエを貼ることを、医者が目くじら立てるのか疑問だが、いずれにせよ世辛い世になったものだと思う。
コメント (8)
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