ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

「月は無慈悲な夜の女王」 R・A・ハイライン

2007-09-01 14:06:29 | 
壊してしまうのは一瞬で出来るから、大切に生きて・・・

私が好きだったレベッカの「MOON」という歌の一節だ。Nokkoの伸びやかな高音が、耳に心地よいいが、歌詞は心をざわめかす。

本当に、壊すのは簡単。積み重ねることは本当に大変で、退屈なまでの細心の注意と努力が必要なのに、それを壊してしまうのは、とっても簡単。

壊れてしまったものは、決して元には戻らない。だからこそ、積み重ねた努力は大事にしたい。一時の激情に駆られて、取り返しのつかぬ誤りは、なんとしても避けたいものだ。

そう痛切に想うのは、何度も苦い思いをしてきたからだ。多くの場合、その一瞬は無造作な一言であった。その一言が、相手のプライドを傷つけ、信頼を失わせ、冷たい壁を生み出した。悔やんでも悔やみきれぬ痛切な後悔は、決して忘れることができない。

ごく稀にだが、覚悟の上で、これまで築き上げたものを、自らの意志でぶち壊すこともある。この場合、後悔はしない。ただ、その決断に至るまでが、艱難辛苦の道程であることが辛い。

後悔はしないからといって、失ったものを哀しむ情までは断ち切れない。人は何かを得ようとしたら、何かを失わずにはいられないのかもしれない。

表題の作品はSF界のビック3(アシモフ、クラーク)といわれるハイラインの代表作の一つだ。地球政府に収奪される悲惨な植民地である月の世界の住人が、コンピューターの力を借りて独立闘争を挑む革命話だ。まだ、コンピューターが今日ほど一般化される以前に書かれたものだけに、少々稚拙に感じる部分もあるが、人工知能と人間との交流は今読み返してみても、心打つものがある。

コンピューターの初期化。これもまた一瞬で出来てしまう。やりたくはないが、やらねばならない時もある。せめてバックアップ出来るものは、普段からしっかりしておくべきだと思う。でも感傷まではバックアップ出来ない。やはり、失えば元には返らぬものは誰の人生にも、必ずあるのだろう。
コメント (6)
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