「お前、陸に上がったら汚れたな」
探偵・深町丈太郎の学生時代の水泳部の親友に向かっての科白が、今も心に残る。繁華街の雑居ビル、歯医者の診療所の一室を間借りする、しがない私立探偵のもとに持ち込まれる事件は、どれも切ない。
そりゃあ、汚れるってもんだ。学生の時の無邪気な自分ではいられない。いられる訳がない。おばあちゃんは、男が社会に出れば7人の敵がいるもんだと、私に諭していたが、7人どころじゃないわな。
同じ黒い虫でも、カブトムシを捕まえる手口と、ゴキブリを叩き潰す手口が同じわけない。相手が卑怯な手を使ってくるなら、こちらも卑劣な手で返すのが、大人の流儀ってもんだ。清廉潔白では、大事なものは守れない。
私とて随分と汚れた。誠実さや信義を重んじ、守るべき秘密を押し隠し、主張すべき道理に声を上げ、沈黙すべき時には貝になる。それでも時には嘘をつく。方便だと強がっても、心の表面にうっすら埃が積もる不快さは、拭い去れない。
だからこそ、なのだろう。学生時代の友人たちとは、可能な限り大人の社会の汚さとは距離を置きたい。せめてこの一時だけは、学生時代に戻って、安らかに酒を飲み交わしたい。汚れちまった大人になった今こそ、学生時代の純粋さ(多少ひねくれてはいたが・・・)を思い起こさせる関係は大事にしたいと思う。
表題の作品は、週刊ギャングという大人向けのちょっとHな漫画雑誌に掲載されていたため、この作品もマイナーなものとならざる得ませんでした。しかし、探偵ものの漫画としては、大人の鑑賞に堪えうる佳作だと思います。
多分、古本屋か漫画喫茶ぐらいでしか読めないと思いますが、もし機会がありましたら是非どうぞ。
探偵・深町丈太郎の学生時代の水泳部の親友に向かっての科白が、今も心に残る。繁華街の雑居ビル、歯医者の診療所の一室を間借りする、しがない私立探偵のもとに持ち込まれる事件は、どれも切ない。
そりゃあ、汚れるってもんだ。学生の時の無邪気な自分ではいられない。いられる訳がない。おばあちゃんは、男が社会に出れば7人の敵がいるもんだと、私に諭していたが、7人どころじゃないわな。
同じ黒い虫でも、カブトムシを捕まえる手口と、ゴキブリを叩き潰す手口が同じわけない。相手が卑怯な手を使ってくるなら、こちらも卑劣な手で返すのが、大人の流儀ってもんだ。清廉潔白では、大事なものは守れない。
私とて随分と汚れた。誠実さや信義を重んじ、守るべき秘密を押し隠し、主張すべき道理に声を上げ、沈黙すべき時には貝になる。それでも時には嘘をつく。方便だと強がっても、心の表面にうっすら埃が積もる不快さは、拭い去れない。
だからこそ、なのだろう。学生時代の友人たちとは、可能な限り大人の社会の汚さとは距離を置きたい。せめてこの一時だけは、学生時代に戻って、安らかに酒を飲み交わしたい。汚れちまった大人になった今こそ、学生時代の純粋さ(多少ひねくれてはいたが・・・)を思い起こさせる関係は大事にしたいと思う。
表題の作品は、週刊ギャングという大人向けのちょっとHな漫画雑誌に掲載されていたため、この作品もマイナーなものとならざる得ませんでした。しかし、探偵ものの漫画としては、大人の鑑賞に堪えうる佳作だと思います。
多分、古本屋か漫画喫茶ぐらいでしか読めないと思いますが、もし機会がありましたら是非どうぞ。