ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

「火星のプリンセス」 エドガー・ライス・ラロウズ

2007-09-13 12:53:01 | 
けちをつけようと思えば、突っ込みどころ満載で、どこをどう突くか迷うぐらいだ。

大体が、星空をぼっ~と眺めていて、気がついたら火星に降り立っていただ? 子供だって、もう少しマシな嘘をつこうってもんだ。第一、重力が軽いのに、なんで火星の馬は八本足なんだ?加重を分散させる意味がないだろう。

いやはやなんとも本当に、矛盾と疑問だらけの設定なのに、面白いから不思議だ。SF好きを広言していた私だが、この火星シリーズを思うと、少々複雑な気分に陥る。あまりに非科学的に過ぎるのだ。どう考えてもサイエンス・フィクションとは思えない。その無茶苦茶ぶりは、ハンナ&バーバラのTVアニメに劣らないと思う。

ところが、どっこい面白い。いきなり虜囚にされ下僕扱いされたにもかかわらず、火星を空に大地に地下にと大活躍。裏切りと信頼、誤解と和解、絶望と奮起がリズムよく織り交ぜられ、ページをめくる手を休ませない。中学生の頃、私は夢中になって読んだものでした。

敢えて言えば、三巻の「火星の大元帥」までがピークで、後は蛇足の感は否めない。まあ「火星のチェス人間」は面白かったが、後はおまけだな。

それと、やはりイラストが素晴らしい。武部本一郎画伯によるものだが、アメリカの原本のイラストとは雲泥の差。とりわけ表題の表紙に描かれたデジャー・ソリスのイラストが秀逸。あたしゃ清楚さと色香が両立したこの絵に惹かれて、本を手に取ったものでした。

最近、創元推理文庫で復刻版が出てますが、数冊をまとめて作り直したので、少々興ざめ。出来るなら古本屋を探して、当初の刊行本で読んで楽しんで欲しいシリーズです。
コメント (7)
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