ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

「嫌われものほど美しい」 ナタリー・アンジェ

2007-09-27 08:31:06 | 
一応、書いておきますが、私のことではありません。副題に「ゴキブリから寄生虫まで」とあるように、新進気鋭のサイエンス・ライターが最新の生物学を分りやすく書いた本です。

誰が言ったのか忘れましたが、この地球という惑星の地表で最も繁栄を謳歌しているのは、案外昆虫類かもしれません。多分、そう遠くない将来、現世人類は滅ぶのでしょうが、間違いなく昆虫は生き残ると思います。

私は20世紀後半より、人類の科学は停滞しているとの疑念を捨て切れていません。現在の文明の根底を支える火力、原子力、電力などの基礎技術は、全て20世紀前半までの発明を育んだものであり、基礎科学に関してはマクスウェル以降革新的な発見はないと思うのです。

さりとて応用技術的科学は、今もなお進展を遂げているのも事実。なかでも生物学の世界では、遺伝子工学やコンピューターによる分析技術の向上により、新たな発見が相次いています。これが面白い~♪

いらぬ雑学的知識ではあるのですが、私はこの手の話題が大好きなのです。でも、この本の数あるエピソードのなかで、一番印象に残ったのは、科学では対処しきれぬ心の闇を抱えた人間たちの話だったりします。

エイズに感染した事実を認めようとせずに、死を迎えた友人の話。心が病んでしまった、大好きだった祖母の話。どれも、科学の進歩では解決できなかった辛い思い出話。知識は人の幸せに貢献してこそ価値があると、私は信じています。しかし、その知識の限界を認識しつつも、著者は科学の進歩に関心を持ち続けます。

人間に嫌われてきたゴキブリや寄生虫などから、その人間に役に立つ知識が得られるかもしれないとしたら、なんとも皮肉な話です。嫌うばかりでなく、ちょっと興味を向けてみれば、思わぬ発見があるかもしれません。むやみに嫌わずに、ちょっと冒険してみませんか?
コメント (4)
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