ヌマンタの書斎

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簡保の宿、売却問題に思うこと

2009-06-10 12:12:00 | 社会・政治・一般
いつの時代だって、政治権力者に擦り寄る商人が一番稼ぐ。

三菱の岩崎弥太郎だってそうだ。国有財産を安く引き取り暴利を得る。当然にその利益の一部は政治家と官僚たちに配分される。しかし、その一方で国有財産がうまく稼動して雇用を生み出し、経済の近代化に寄与したことも事実として認めざるえまい。

では、オリックスの宮内氏はどうだろう。小泉改革の陰の首謀者の一人であり、竹中氏の意を汲んでの民営化路線を疾駆した経済人の一人である。郵便局の資産を安く譲り受け、それで儲けようとしたことは間違いないと思う。で、それが悪いのか?

鳩山総務大臣のお冠に触れて、「簡保の宿」の売却は差し止め。西川・郵貯社長の続投も危うい。

で、改めて考えてみたい。本当に悪いことなのかを。

私はきわめて難しいと考えています。評価の視点を、いつの時点で、どの視座からみるかでまるで変ってくると思うのです。一例として東京近郊の某アミューズメントパークを挙げましょう。

富士額の二足歩行ネズミが人気の遊園地ですが、この敷地は元々は埋立地。私が子供の頃には、この埋立地には都心に通う若いサラリーマン向けに、安い住宅が建てられる予定だったはずです。多分住宅公団とかが請け負って、ここに団地を大量に建設するつもりだったのでしょう。

しかし、そんな都心の近場に安い住宅を建てられては困る人たちがいた。一計を案じた彼らは、一説によると500億を超える買収資金を投じて計画を変更させた。永田町や霞ヶ関はもちろん、県議会、市議会、県庁、市役所とばら撒いたと聞いている。いったい何人買収したんだ?

一人殺せば殺人犯だが、1万人殺せば英雄なのか?

とにかく、その埋立地は住宅ではなく遊園地がたった。ただし遊園地用地は3割ほどで、残りは転売されることは公然の秘密だった。実際にホテルやショッピングセンターとして転売された。これは大手小売店がよくやる手で、新たにスーパーを出店する際、多めに土地を買っておき、スーパーに人が集まり周辺の時価が上昇すると、余った土地を売りさばき投下資金を回収する。それと同じ手法をここで用いたわけだ。

しかし、この遊園地の出資者たちは不満だった。折り悪くバブルの崩壊にぶつかり、思ったほどには土地は売れなかった。90年代あの遊園地に行った方なら、空き地が沢山あまっていた風景を覚えているかもしれません。ただ、予想よりもその遊園地は人気が出た。そこで遊園地を建て増ししたぐらいだ。

私が聞き及ぶ範囲では、まだ十分土地の転売に成功したわけではないらしく、件の出資者たちには不満が残っているらしい。でも、国際的な観光資源として地元に金を落としているのは間違いないし、雇用も確保されている。

さて、この税金を投じて埋め立てられた土地の民間への払い下げの評価は如何に?

もし仮に住宅公団なりが安い団地などを大量に建てていたら、どうなっていただろう。最近増加中の高齢者ばかりの限界集落の予備軍になっている可能性は否定できない。そう考えると、遊園地としての開発は良かったのだろう。

その一方、近年まれにみる大規模な贈収賄であった事実は追及されることなく押し隠され、国有財産の安値による払い下げによる損害も、問題視されることなく、このまま消え去ることになる。

いささかの不快感を感じつつも、私はこの払い下げは現時点では成功だと思う。

で、「簡保の宿」である。このままでは赤字垂れ流し。では民営化して払い下げれば解決するのか?払い下げの恣意性はともかくも、民営化=経営の効率化と決め込むのは如何なものか。失敗例だって沢山あるぞ。

今の時点では、払い下げ路線も、その見直し路線も、いずれが正しいとは判断しずらい。お上の政に協力した商人が美味しい目をみようとするのは当然だし、結果よければそれで善しとしてきた過去の実例数多であるのも事実。

強いて言えば、西川=宮内の両名は時機を失した。小泉内閣当時なら当然問題なく、安倍でも大丈夫だったはず。反・小泉路線が出てきた福田から怪しくなり、麻生まで引っ張ったことが最大の失敗でしょう。
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