ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

FRONT MISSION 太田垣康男

2009-06-01 12:19:00 | 
アシモフは泣いているかもしれない。

SF作家であるアシモフは、ロボットの将来を見据えてロボット三原則を提唱した。しかし、現実にはその三原則は有名無実化している。

皮肉なことに、あるいは当然かもしれないが、ロボット三原則を踏みにじっているのは他でもないアシモフの故国アメリカだ。近年アメリカにおける無人兵器の開発には目をみはるものがある。

既に実戦に投入されて戦果を挙げている無人偵察機プレデターが有名だが、それは公開された情報の一部に過ぎない。荒地を駆ける無人戦車、テロリストを追い詰める無人攻撃車などが、次々と開発され試験的に戦場に投入されている。無人戦闘機さえ、その開発リストには上がっていて、いずれ実際に空を飛ぶと思われる。

アメリカ軍首脳が、何故これほど無人兵器に拘るかといえば、やはり人的損失を減らしたいからに他ならない。兵器のハイテク化は、それを操作する人員に対する教育時間の増加をもたらした。

現在は、戦車からヘリコプター、はたまた個人装備に至るまで、ありとあらゆる兵器がハイテク化されている。その操作方法を覚えるだけでも大変な労力だ。つまり高額な教育コストがかかっている。

はっきり公開されているわけではないが、一般徴募の兵士のすべてがこのハイテク化に対応できるわけではないらしい。つまり、ハイテク兵器を駆使できる兵士は貴重な存在となっている。

この人的資源の損失を避ける手段としてのロボット兵器の開発であるらしい。また湾岸戦争でもイラク戦争、アフガン戦争でも家族を戦場で失った有権者は、どうしても軍に否定的となる。民主主義を掲げる以上、これらの有権者の存在は無視できない。いくら情報管理をしても、悲しみにくれる家族の気持ちまでは統制できない。

だからこそ、兵士の人的損失を回避できるロボット兵器の開発は急務であるらしい。しかし、現時点ではロボット兵器自体は、人間の操作に頼らねばならない。理想は人工知能による自律タイプのロボット兵器なのだが、簡単な任務しか出来ず、しかも状況の変化に適切に対応するだけの能力には欠けるらしい。

そのため、多くの場合無線誘導などで人間が間接的に操作するタイプが主流だ。最初にあげたプレデターがその典型である。しかし、実際に戦場を指揮する現場指揮官からは、この間接操作タイプは万能ではないとの意見が多い。間接操作はたしかに人的ロスを最小に留める。このメリットは大きいが、現場と操作の時間的ロスの問題や、無線妨害やハッキングなどの妨害に弱く、実戦での不安を問う声は意外に多い。

やはり人間が直接操作するタイプも現場から求められているようだ。そうなると、表題の作品に出てくるような人間が直接コントロールするタイプのロボット兵器が出てくる可能性は高い。

ゲーム好きなかたなら知っているかもしれないが、実はこの作品は元々はTVゲームから生まれた。私はやったことがないが、ゲーム好きの間ではかなりコアなファンを獲得した名作であるらしい。つまり、表題の漫画はTVゲームの漫画化でもある。

戦場の壮絶さを描いた漫画としては屈指のものだと思います。手足をぶっとばされる兵士や、無辜の市民が無雑作に殺される理不尽さが、情にながされることなく淡々と描かれているのが印象的です。掲載される雑誌(コミック・ガンガン)がマイナーなので、あまり知られていませんが、なかなかに傑作だと思うので、機会がありましたらどうぞ。
コメント (2)
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