今年のJリーグを振り返ってみたとき、一番印象的だったのがJ2から昇格したサンフレッチェ広島だった。
元々実力或るチームであり、J2落ちは不運なものでもあった。だが、見事に首位でJ2を駆け抜け一年でJ1に戻ってきた。開幕当初は同じくJ2昇格組の山形の勢いが目立っていたが、広島のサッカーも快調に勝利を重ねた。
そのサッカーはペトロビッチ監督のもと、徹底したパス・サッカーであり、戦術的にはポジション重視のサッカーでもあった。理想はリーガ・エスパニョーラのサッカーだと公言し、醜く勝つよりも、美しく戦うサッカーを目指すとの言に嘘はない。そのことを思い知らされたのが、第30節での対フロンターレ川崎戦だった。
私自身は当初、フロンターレに注目していた。その前の試合でエースFWのジュニーニョと主力FWのチョン・テセの二人が揉めていたと聞いていたからだ。優勝を何度も逃したフロンターレには、今期こそ優勝の思いが強い。だからこそ、この試合は見逃せないと思っていた。果たして内紛で潰れるのか?興味津々だった。
ところが試合は7―Oでフロンターレの圧勝。心配された内紛の影響はなく、自慢の3トップ大爆発の試合だった。
結果だけみれば、大味な試合に思える。しかし、実際の試合は違った。とりわけ前半の緊張感は半端ではなかった。Jリーグ随一の攻撃力を誇るフロンターレは、サンフレッチェの果敢な攻撃の前に色を無くした。前半はかろうじて一点を先制したが、いつサンフレッチェが得点してもおかしくない試合展開であった。
しかし、前半で広島が一人退場者を出したことの影響が後半に一気に出てしまった。フロンターレはトップ下のチームの司令塔である中村憲剛をボランチに下げ、守備を固めると同時に長距離パスを主体としたカウンター攻撃にシフトした。憲剛はJリーグでも屈指のパッサーであり、鹿島の小笠原と並んで長距離パスをも得意としている。これが見事にはまった。
憲剛のロングパスはジュニーニョ、チョン・テセ、レナチーニョの3トップを縦横無尽に走らせて、矢継ぎ早に得点を重ねた。さすがとしか言い様がない。これなら優勝を十分狙えたと思った。
だが、私の目を惹いたのはサンフレッチェの攻撃姿勢だった。最後の最後まで自分たちの攻撃スタイルを変えずに責め続ける姿勢は真摯なもので、試合の緊張感は点差とは裏腹にいや増すばかりだった。
普通、このような大敗を喫したチームは、試合後サポーターから罵声を浴びせられる。しかし、この試合の直後、サンフレッチェのサポーターたちは選手たちを罵りはしなかった。むしろ暖かく拍手して迎えた。あの一人少ない10人で全力でピッチを駆け回り、最後まで諦めなかった戦いぶりを賞賛したのは無理のないところだ。
実際、対戦相手のフロンターレは広島の攻撃を跳ね返すのに必死だった。ゴール前に選手を集めて、ゴールに鍵をかける試合ぶりだった。だからこそロングパスによるカウンター攻撃が効果的だったのだが、守備の選手たちは大変だったと思う。それだけサンフレッチェの攻撃は凄まじかった。
試合後、サンフレッチェのペトロビッチ監督は疲労困憊した選手たちを褒めたという。最後まで試合を投げずに、攻めの姿勢を貫く様は、十分賞賛に値するというところだろう。
弱いチームは守備から強化する。無様な戦い方でも、それが基本だと思う。でも、サンフレッチェはあくまで攻撃にこだわる。選手全員が一致して攻撃サッカーの更なる向上を目指している。攻めて勝つ美しいサッカーを、本気で目指すチームがあってもいいなと思った今期のJリーグでした。
元々実力或るチームであり、J2落ちは不運なものでもあった。だが、見事に首位でJ2を駆け抜け一年でJ1に戻ってきた。開幕当初は同じくJ2昇格組の山形の勢いが目立っていたが、広島のサッカーも快調に勝利を重ねた。
そのサッカーはペトロビッチ監督のもと、徹底したパス・サッカーであり、戦術的にはポジション重視のサッカーでもあった。理想はリーガ・エスパニョーラのサッカーだと公言し、醜く勝つよりも、美しく戦うサッカーを目指すとの言に嘘はない。そのことを思い知らされたのが、第30節での対フロンターレ川崎戦だった。
私自身は当初、フロンターレに注目していた。その前の試合でエースFWのジュニーニョと主力FWのチョン・テセの二人が揉めていたと聞いていたからだ。優勝を何度も逃したフロンターレには、今期こそ優勝の思いが強い。だからこそ、この試合は見逃せないと思っていた。果たして内紛で潰れるのか?興味津々だった。
ところが試合は7―Oでフロンターレの圧勝。心配された内紛の影響はなく、自慢の3トップ大爆発の試合だった。
結果だけみれば、大味な試合に思える。しかし、実際の試合は違った。とりわけ前半の緊張感は半端ではなかった。Jリーグ随一の攻撃力を誇るフロンターレは、サンフレッチェの果敢な攻撃の前に色を無くした。前半はかろうじて一点を先制したが、いつサンフレッチェが得点してもおかしくない試合展開であった。
しかし、前半で広島が一人退場者を出したことの影響が後半に一気に出てしまった。フロンターレはトップ下のチームの司令塔である中村憲剛をボランチに下げ、守備を固めると同時に長距離パスを主体としたカウンター攻撃にシフトした。憲剛はJリーグでも屈指のパッサーであり、鹿島の小笠原と並んで長距離パスをも得意としている。これが見事にはまった。
憲剛のロングパスはジュニーニョ、チョン・テセ、レナチーニョの3トップを縦横無尽に走らせて、矢継ぎ早に得点を重ねた。さすがとしか言い様がない。これなら優勝を十分狙えたと思った。
だが、私の目を惹いたのはサンフレッチェの攻撃姿勢だった。最後の最後まで自分たちの攻撃スタイルを変えずに責め続ける姿勢は真摯なもので、試合の緊張感は点差とは裏腹にいや増すばかりだった。
普通、このような大敗を喫したチームは、試合後サポーターから罵声を浴びせられる。しかし、この試合の直後、サンフレッチェのサポーターたちは選手たちを罵りはしなかった。むしろ暖かく拍手して迎えた。あの一人少ない10人で全力でピッチを駆け回り、最後まで諦めなかった戦いぶりを賞賛したのは無理のないところだ。
実際、対戦相手のフロンターレは広島の攻撃を跳ね返すのに必死だった。ゴール前に選手を集めて、ゴールに鍵をかける試合ぶりだった。だからこそロングパスによるカウンター攻撃が効果的だったのだが、守備の選手たちは大変だったと思う。それだけサンフレッチェの攻撃は凄まじかった。
試合後、サンフレッチェのペトロビッチ監督は疲労困憊した選手たちを褒めたという。最後まで試合を投げずに、攻めの姿勢を貫く様は、十分賞賛に値するというところだろう。
弱いチームは守備から強化する。無様な戦い方でも、それが基本だと思う。でも、サンフレッチェはあくまで攻撃にこだわる。選手全員が一致して攻撃サッカーの更なる向上を目指している。攻めて勝つ美しいサッカーを、本気で目指すチームがあってもいいなと思った今期のJリーグでした。