ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

マニュアル尋問

2009-12-18 05:32:00 | 社会・政治・一般
教わるだけでは身につかない。

教わらなければ分らないことは沢山ある。だが、教わるだけで、その知識を使いこなせるわけではない。実地で使ってみて、その知識を使いこなしてこそ役に立つ。その使いこなし方は、教わるというよりも自分なりに覚えなければならない。これが難しい。

私は税理士として、顧客から「先生」と呼ばれる。先生というものは、その知識をもって教え導くものだと思うが、実際には教わり上手でないと勤まらない。

医者は診察で患者の容態を把握してからでないと治療に入れない。それと同じで税務相談に訪れた方の相談は、その方の置かれた状況のみならず、本人の考えや家族構成、はたまた仕事や家庭の周辺事情までを把握しないと、適切な回答が出せない。

つまり、先生と呼ばれても、実際には相談者から如何に情報を引き出すかが問われる。教えるよりも、教えてもらうほうが大切になる。いかに相手に話をさせるか、これが一番難しい。相手に話をさせて、相手の希望、本音、不満を読み取ることが出来ないと、相手が納得できる回答を教えることは難しい。

もちろん、相手が意図をもって肝心な情報を隠す場合がある。これは相手が悪いので仕方ないが、困るのは相手が話す必要がないと思い込んでいる大事な情報が少なくないことだ。これを如何に引き出すかが腕の見せ所だ。

これは弁護士や医者だけでなく、おそらく多くの仕事で必要とされるノウハウだと思う。なかでも警察こそが、この情報を引き出すプロフェッショナルでなければならないはずだ。

残念ながら世に多くある警察の捜査の失敗の少なからぬ部分が、この情報の引き出し方が稚拙であることを原因とするのではないかと、私は最近思うことが多い。

数年前のことだが、私の自宅の隣の方が孤独死で亡くなった。一ヶ月以上、姿を見ないので変に思っていたら、ある晩帰宅すると警官が多数隣宅に出入りしていた。事件か?

すぐに警官が3名ほどやってきて、私にいろいろと訊きに来た。別に含むところもないので、素直に最近の様子について話したが、一人の警官の何気ない一言が、私を怒らせた。

「そういえば、三年前お宅はK氏(隣宅の人)とトラブルを起しましたよね」

はぁ?こいつ私を疑っているのか。

「なんのことですか?うちじゃありませよ。」と冷淡に答えておく。腹が立ったが、おそらくはマニュアル的な質疑なのだろうことは容易に推測できた。だてにミステリーを愛読している訳じゃない。

こんな時こそ冷静に対応する必要があることぐらい分っている。でも、むかついたので他にも知っている情報があったが、それは教えてやらないことにした。

一人暮らしのK氏だが、実は出入りしていた複数の女性がいた。多分デリヘルの女性だと思うが、毎月呼んでいたはずだ。もし事件性がある死亡ならば、大事な情報だと思う。

だから、警察が事件性を疑い、再度訊ねてきたら教えてやるつもりだった。もちろん厭味を言うのも忘れずにだが。

幸いにして病死と判断されたらしく、その後は音沙汰なし。もし、事件性のある死亡だとしたら、私が黙っていたことは初動捜査に大いに影響したと思う。

疑うのが警察の仕事だとは分っている。でも、やり方が下手だ。だから私は協力してやらなかった。

おそらくは、警察は長年の経験を活かしたマニュアルをもっている。それを教えているのだろうが、その知識を実際に活かす遣り方は、マニュアル通りにはいかない。

私は子供の頃、けっこう警察の世話になっているので、ベテランの刑事が聞き上手なのを知っている。あの警官、まだまだ修行が足りんぞ!
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする