ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

銀行は強盗、外資はハイエナ ビル・トッテン

2011-05-09 12:01:00 | 

18世紀後半、イギリスで起った産業革命は、火力というエネルギーを生産の動力としたことに価値がある。従来の手作業から、火力(実際は蒸気)を動力源とした機械による大量生産こそが、ヨーロッパを世界の覇者となさしめた。

やがて19世紀から20世紀にかけて第二の産業革命が静かに進行した。それが電気エネルギーであった。これに石油化学が加わって初めて今日の現代文明の基盤が成立した。

以来、100年以上経つが、火力と電気、石油化学に勝る発明はなされていない。コンピューターにせよ、インターネットにせよ、枝葉の技術革新であり、文明そのものを支えるほどの力はない。

このことが、何を意味するのか?

アメリカの資金の流れを観れば分る。すなわち、投資に値する実業は存在しない。

そんな馬鹿なと思うかもしれない。バイオ産業、省エネ技術、介護、ロボット、医薬品などは、次々と技術革新を進めているではないかと反論する方は多いはずだ。

しかし、冷静に数字を分析すれば分る。いずれも、その国のGDPを支えるほどの力はないことを。つまり先進国においては、技術革新不足による産業の停滞が起きている。

資本主義という奴は、延々と泳ぎ続けるマグロのような回遊魚に似ている。常に資本(マネー)を動かし続けねばならぬ宿命を有する。

大量の資本を蓄えた富裕層にとっては、その莫大な資金の投資先が見当たらないことが問題であった。西欧の覇権の原動力であった製造業は、既に成長の限界に達しており、先の見通しは暗い。

この悲観的な状況下にあったからこそ、資金は新たな投資先として株と不動産につぎ込まれた。気がつけば明らかに適性額を遥かに超えた評価額がついた。過剰な投資が値段を吊り上げ、やがてババ抜きが始まり、バブルははじけた。

もちろん、その時には、富裕層はとっくに売り抜けて、投資額以上の莫大な利益を手にしていた。それが20世紀末にアメリカで起こった住宅ローン破綻であった。

これは金持ちが中産階級の富を掠め取って、更に金持ちになったことを意味する。没落した中産階級は、新たな貧困層としてアメリカの社会の貧困の差の激しさを証明することになった。アメリカの貧富の差の激しさは、中世の封建領主のそれを超えつつある。

これに味を占めた富裕層は、更なる利益を国外に求めた。この動きをグローバリズムという。発展途上国を支援するといいつつ、社会資本を安値で買い叩き、莫大な収益を上げて、搾りかすだけを残して立ち去ったのは、他でもない外資系ファンドであった。

かつての産業革命の聖地さえも例外ではない。ビックバンの名の下にロンドンの金融市場は外資の手に落ちた。時価総額だけなら世界一となった東京も、彼らの餌狩場に過ぎない。アジア各国も彼らの毒牙にかかって、瀕死の重傷を負うこととなったのは、皆さんご存知のとおり。

そのことを分りやすく書き記したのが表題の書です。もっとも、産業構造の停滞にまで踏み込んでいない点に不満は残るのですが、在日アメリカ人として長きにわたり活躍しただけに、その率直な言い様には説得力があります。

無条件に銀行を信用するような無邪気な日本人とは異なり、事実と実績から銀行の変化を素直に受け止め、それに気がつかない日本人に警鐘を鳴らしています。興味がありましたら、一度読んでみては如何でしょうか

コメント (4)
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