ヌマンタの書斎

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放射能の子供たち

2011-05-19 13:56:00 | 社会・政治・一般

最初に断っておくと、私は今の原子力発電は過渡期の技術レベルのものであり、原子力(核分裂)自体を十分にコントロールできていないと考えている。

つまり十分に制御できない技術を使っているのが、現在の原子力利用だと思う。従って、今回の東日本大震災のような想定外の事態が起きれば、大きな事故になってしまうのは必然だろう。

このような事故が起きると、原子力発電の廃止を訴える声が上がるのは、致し方ないと思う。気持ちは分るが、代替エネルギーが十分にない以上、簡単に原子力発電を止めることもできない。

風力発電や太陽光発電などは、発電効率が低いだけでなく、不安定であり産業用には向かない。現在の日本が電気を主としたエネルギー多消費社会である以上、社会が必要とする電気を供給することに、原子力発電は大きく貢献している。簡単に他の電力(火力や水力)に変えるわけにはいかないのだ。

でも、今の技術レベルでの新規の原子力発電所建設には、私とて賛成できない。やはり、現状以上の安全性を確保出来きるものでなければ認められまい。それが人情ってもんだ。でも、廃止は求めません。むしろ、今回の事故を活かして欲しい。

つまり、今回の福島原発の事故を踏まえたうえで、なお一層の安全向上への努力が求められると思う。この方向が本筋だと私は考えます。失敗は反省して、今後に活かされてこそ意味がある。止めればいいというのは、安直すぎる。

一方、気になるのが今回の事故による放射性物質の拡散被害だ。広瀬隆をはじめ心情的原子力反対論者が、さまざまな情報を過剰に、いや異常に垂れ流しているせいか、人々の間に不安が広まっているのは問題だと思う。

もちろん、心配すべき問題ではあるのだが、いささか煽動的に過ぎ、最初に反対ありきの教条的反原発論であることが、むしろ不快にさえ思っていた。

そんな折、産経新聞に興味深い記事が載っていた。つくば市にある気象研究所が発表した、降下した放射性物質の検出値を1955年からデーター化したものだ。

このデーターによると現在の一ヶ月当たりの放射性物質の検出値は、東京の4月で一日で一平米当たり最大170ベクレル、最小で一日4ベクレルだという。月換算すれば、4月で1000ベクレル近くになる。

この数値、実は1960年代と比較して、そう多いわけではない。なぜなら、あの冷戦の最中では米ソが核実験を繰り返していたので、現在よりも地球規模で遥かに多量の放射性物質が拡散していたからだ。

この状況は次第に減りながらも、シナが核実験を大幅に減らすまで続き、1985年以降になって、ようやく一平米あたり月の検出量が0.1以下になっていた。

驚かされるのは、私が幼少期を過ごした60年代から70年代にかけても、日常的に放射性物質は少なからず東京に降下していたことだ。

そういえば、小学生の頃に先生から「雨に放射能が含まれているから、濡れて遊ばないように」と注意された記憶がある。なんだ、あたしゃ放射能にまみれて育ったのか。

なお、このデーターを提供した気象研究所は、もちろん政府系の研究機関であり、人心を落ち着かせるための政治的意図をもって行われたものであることは間違いない。データー改竄の可能性はゼロではないが、割と反証しやすいデーターなので、意図的な改竄の可能性は低いと思う。

なによりも、実感として1960年代の核実験の多さを思えば、納得できるデーターでもある。なにせ、平然と空中で水爆を爆発させたこともあった。放射性物質が世界中に拡散するのも当たり前だ。

そうか、私は放射性物質の拡散した空気を吸い、放射性物質を含んだ食物を食べて育った人間だったのか。こりゃあ、広瀬をはじめとした反原発論者の言うように、癌や白血病で苦しみもだえながら死んでいくのだな、きっと。

わァ~タイヘン。さあ、原発廃止だ、原発もう止めよう。

って、手遅れじゃん。

ふん!人間って案外ふてぶてしいもので、原爆の爆心地で育っても、普通に健康に生きられる人もいる。原爆とも原発とも無縁の環境に育っても、癌や白血病で死ぬ人もいる。

もちろん、多量の放射性物質がある環境が、人体に良くないのは当然だと思う。でも、心配しすぎて、そのストレスで体調を崩し、あまつさえ癌を発症する人もいる。

恐怖を煽るような意図的な反原発記事には要注意だと思いますよ。

コメント (4)
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