ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

特攻の拓 所十三

2012-06-14 12:04:00 | 

絶滅危惧種ではないかと思うことがある。

なにがって、暴走族である。私が十代の頃には全盛を極め、土曜の夜ともなれば幹線道路を数百台のオートバイが爆音と共に疾走していたものだ。マフラー(消音器)を改造して、わざわざ凄まじいエンジンの排気音が轟くようになっているため、騒音公害として話題になり、警察が本腰入れて取締りに入った。

だが、反発しざかりの思春期の若者たちは、警察になかなか屈せず、トム&ジェリーさながらの追いかけっこは、週末の風物詩となる始末であった。TV局が特番でやる警察24時のような番組で観られた方も少なくないと思う。

だが、それも今は昔のお話と化しつつある。今や都心で暴走族を見かけることは希で、地方都市の週末の夜に偶に見かける程度だ。しかも、かつて数百台が駆け回ったとは思えないほどの少人数になっている。

私はここ数年、20台以上のバイクからなる暴走族なんぞ見たことがない。

たしかに警察の取り締まりは執拗であったが、それが原因とは思えない。むしろ、バイクの高価格化が、怒れる若者たちからバイクを奪った。かつては、十万円台ぐらいで小型バイクが買えた。排気量400CC以上の中型バイクだって、20万から30万円前後で手に入った。中古ならば、さらに安い。

ところが、現在売られているバイクは、往時の倍近い値段となっている。ちょっと高性能なバイクだと50万を超えるものも珍しくない。かつてバイク乗りの憧れだった限定解除で乗れるナナハン(750CC以上の大型バイク)ともなれば、100万近いから驚く。

これでは簡単に買えない。むしろ中古の車を買ったほうが安いぐらいだ。ところが、今どきの若者はバイクはもちろん、車にさえ憧れを持たない。彼らが欲しがり、今や必需品なのはバイクでも車でもなく、携帯電話なのだ。

この携帯電話って奴は、購入価額はたいしたことがないが維持費がかかる。通話料とパケット通信で月々の支払いが5万円を超える若者は珍しくない。これではバイクも車も買うゆとりなんざない。

高速道路でバイクの集団を見かけることはあるが、暴走族であることは滅多にない。多いのは中高年のツーリング・クラブのツアーだ。目立つのは、かつての憧れの的、ハーレーダビッドソンのバイクにまたがったおじさん、おじいさんたちだ。

また最近では、大型のスクーターのバイク集団も散見する。イルカにまたがったかのような、ゆったりとした姿は週末の余暇を楽しむおじさんたち。たまに、昔のバイクで連れ立って走る元・暴走族と思われるオジサンたちを見かけることもある。レアものといっていい。

いずれも道路交通法規を順守している平和な市民そのもので、暴走族なんて歴史上の風物詩と化しているのが実情だ。

そんな現状を踏まえているせいか、今どきの若者が読む漫画雑誌でさえ、暴走族が出てくることは希だ。路上の不良少年たちが主人公の漫画ならば、ときおり見かけるが、爆音奏でるバイクにまたがった暴走族のお兄ちゃんが出てくる漫画は皆無に近い。

そんな風潮に反発するように、最近月刊ヤングマガジン誌上で、あの懐かしの暴走族ヤンキー漫画の「特攻のタク」のセカンドストーリーが連載されている。もっとも主人公はタクではなく、あのセロニアスだったり、マー坊だったりする。

私からすると、ネット上で大言壮語を吐いていい気になっているニートの若者より、喧嘩とバイクに取りつかれた暴走族のお兄ちゃんたちのほうが、よっぽど好ましく思えてならない。実際、面白い奴多かったしね。

とはいえ、バイクの暴走族なんて本当に絶滅が危惧される昨今。懐メロを聴くような感じて、表題の漫画を読んでいます。妙な時代になったものだと思うのは、私が年をとったからでしょうかね。

コメント (4)
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