日本メーカーに元気がない。
かつてモーターショーといえば、デトロイト、ジュネーブ、パリそして東京であった。世界各国の主要自動車メーカーが最新の車を展示して隆盛を誇った。
だが、今や東京は廃れるばかり。替わって躍り出たのが北京である。今は世界最大の自動車販売市場と化したシナを目指して、世界の主要自動車メーカーがしのぎを削る最前線である。
もちろん日本メーカーも出店しているが、どうも活気がない。電気自動車やハイブリッドに力を入れるのは分かるが、どうもデザインが爺臭い。はっきり言えば、恰好悪い。なんか平均点が65点で、やむなく多数決で決められたような、可もなく不可もない退屈なデザインが多い。
昔から日本メーカーの最大の弱点がデザインだったのは確かだが、いまだ進歩も改善も観られない。それに引き替え、デザインに魅力を感じたのが現代や起亜といった韓国メーカーだ。先鋭的で未来を訴えるイメージのデザインは、明らかに日本メーカーを上回っている。
中身だって、日本の最新鋭の生産設備を導入しているだけに、その差はかなり縮まっていると思う。しかもこの円高とウォン安なのだから、今後日本車を上回るケースは出てくると思う。もちろん、急速に地力をつけつつある中国メーカーも油断できない。
今後、世界市場に占める日本車の割合は下がる一方だと予測せざる得ない。
一方、いまだに日本メーカーが世界市場の7割を握る分野がある。それがオートバイの世界だ。ホンダ、ヤマハ、カワサキ、スズキはオートバイの世界ではビック4とも言うべき存在であり、かろうじてBMWが続くくらいだ。
ハーレーダビッドソンも健闘しているが、むしろイタリアのモト・グッツイやドゥカティのような小さなメーカーの頑張りが嬉しい。あのデザインは真似できないと尊敬の念さえ抱く。
大型バイクの世界は、日本のビック4とドイツ、イタリア、アメリカでぼぼ寡占状態であり、この状況は当分変わりそうもない。一方、ミニバイクの世界は、中国、タイ、インドネシアに個性的なメーカーが沢山現れて、日本メーカーの牙城を崩しつつある。
途上国では、まだまだミニバイクの需要が旺盛で、現地国のニーズを取り込んだ現地メーカーの躍進は成長の証しでもある。この分野に関しては、日本の市場占有率は大きく低下すると思われる。これは致し方ない。
ただ、大型バイクの世界は完全にブランドを確立しているがゆえに、当面寡占は続くと思われる。何故なら大型バイクは趣味、嗜好の世界であり、ただ単にデザインが良いとか、スピードが速いだけでは評価されずらいからだ。
なによりも、レースでの実績、歴史が物をいう。オートバイレースの世界は、日本メーカー抜きではあり得ないほど、日本のバイクは浸透している。未だ階級社会の名残が残るヨーロッパでは、オートレースの世界は貴族の趣味の範疇であり、それゆえに新参者の参入は容易ではない。
日本メーカーが、ヨーロッパのレースに参入したのは1960年代であり、当初は厚い壁に阻まれて相当な苦労を重ねている。だが、挑み続け、結果を残し、今では立派なブランドとしての名を持つに至った。欧米ではオートバイ愛好者での間では信仰に近いほどの信頼を得ているほどだ。
ところがだ、肝心の日本ではオートバイは常に日陰者の扱いを受けてきた。原因は若者たちの暴走にある。これは暴走族だけを指してではない。週末の峠道を駆け回るオートバイは、静かな暮らしを望む市民たちの悩みの種であり、その騒音問題は社会的批判の的とされてきた。
おかげで、オートバイに乗っているだけで、世間から白い目で見られる始末である。F1のように四輪の車のレースなら歓迎されても、二輪のオートバイは迫害されてきた。それが大型バイクの世界の過半を占める日本の実情だ。
そんな逆境にめげず、日本の若者たちは世界に挑み続けた。世界チャンピオンさえ狙える上位に名を連ねる日本の若者も数人輩出された。しかし、相変わらず世間の目は冷たく、欧米なら名士として与えられる名誉もない。日本の常識は、世界の非常識との言は、オートバイの世界では常識といっていい。
もっとも今どきの若者は、オートバイどころか自動車にさえ関心が薄く、せっかくスポーツカーを売り出しても、買いに来るのは40代50代のおじさんばかり。若者はスマートフォンに夢中で、独り言をネットの世界につぶやくことで満足している有様である。
もっと世間の風にじかにぶつかって欲しいものだ。オートバイで駆け回れば、風の爽快さを知り、濡れた路面の怖さを学ぶ。死の危険を間近に感じるからこそ分かることがある。車ほど安全でないがゆえに分かることもあるんだよ。
表題の作品は、バブルの始まる少し前に連載が始まり、当時の若者、とりわけバイク乗りから圧倒的に支持されたバイク漫画の傑作です。峠道でひたすらに速さを求めてきた主人公が、その速さの魅力にはまり、またその恐ろしさを知り、それでもなおバイクから離れられず、地道な努力を重ねて世界を相手のロードレースに挑む物語でした。
今日、高速道路を週末にオートバイで走る中高年ライダーは、まず間違いなくこの漫画にはまったことがあるのではないかと思う。今からバイクに乗れとは言いませんが、バイクにはバイク独特の楽しさがあることは分かって欲しいと思います。
余談ですが、私はバイクには現在乗りません。どうも私はバイクに乗ると道路交通法を守らないことが分かったので、自転車で満足しています。風を感じて街を走るの、今でも大好きなんです。
足元のエンジン音の響きを力強く感じながら、バイクで疾走するのは快感に近い喜びですが、そうなると信号とか標識が邪魔くさく思えてならなくなる。そのせいで、免許証を何度もマッポに取り上げられ、財布に手痛いダメージを被ったのでバイクは諦めました。
難病を被ってからは、あの素敵な風が体温を奪い、すぐに体調を崩すと分かり、ますますバイクから離れざる得なくなった次第。だからこそ、バイクに憧れるのでしょうね。実際に乗れないのなら、この漫画を読んで楽しむぐらいが関の山なのが残念です。