失敗には原因があるが、成功には運が必要だと云う。
今年の日本シリーズは、まさにその通りであったと思う。地力は明らかに巨人の方が上だと思う。それは30試合以上で負けなしという驚異のピッチャーである田中から勝利を奪ったことからも確かだと思う。
だが、楽天には運があった。
今回の日本シリーズは、巨人ファンを除けば楽天を応援している人が多かったと思う。まだ復興途上にある東北を応援したい気持ちが、殊更仙台を本拠地とする楽天イーグルスを応援したくなるのだろう。
これには全国区の人気を誇る巨人と言えども抗しがたかったようだ。実際、試合そのものは実力伯仲の緊張感のある試合となった。ただ、打線は水物、やってみなければ分からないというように、リーグ屈指の攻撃力を誇る巨人の打撃陣の不調が、結果的に楽天に有利に働いた。
なかでも阿部の不振が痛かったはずだ。リーグ戦ではチャンスに強い阿部が、日本シリーズでは不調であった。原監督は案外と選手のプライドを気にする人なので、不信を承知で使い続けた。来期を考えたらこれは正しい選択だが、短期決戦では完全に裏目に出たと思う。
もっとも、その不振の打撃陣が、現在日本最高のピッチャーだと云える田中を打ち破った。おそらく巨人のスタッフは万全の対策を練って田中攻略に尽くしたのだろう。だからこその成果であり、これは大したものだと思う。
ただ、あまりに田中に拘り過ぎたのではないか。これが巨人の打線を湿らせた大きな要因に思えてならなかった。その田中を打ち破った第三戦での勢いを活かせば、そのまま連勝しての優勝は十分あったと思う。
しかし、楽天も田中一人のチームではなかった。岩隈がメジャー移籍して後、田中というエースが極端に目立つチームではあったが、若手先発ピッチャーの奮起も相当なものであった。中継ぎ、抑えがイマイチなので、それを承知のチーム全員が力を合わせた。
それが結果的に巨人の連勝を許さず、第七戦までもつれさせたのだと思う。その最後の二戦はホーム仙台であり、地元の熱狂が楽天を後押ししたことは間違いない。さすがの巨人もその熱気に抗しきれなかったのだろう。
無敗のエースである田中を打ち破った巨人もさすがだと思うが、東北復興の看板が輝く楽天の熱気には敵わなかった。巨人の敗因は、やはり田中を意識しすぎて日頃のバッティングが出来なかったことだろう。
逆に楽天は、東北支援の雰囲気を力に変えて実力を出し切った。失敗に原因があり、成功に運がある。つくづく実感した今年の日本シリーズでした。