ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

キン肉マン ゆでたまご

2013-11-27 12:13:00 | 

案外、瓢箪から駒だった気がする。

連載当初は間違いなくコメディー漫画だった。ちょうど吉野家の牛丼がブームだった頃であり、吉野家がスポンサーについているのかと思うような設定が鼻についたぐらいだ。

だいたい落ちこぼれ超人という設定からして可笑しかった。相棒というか、参謀役あるいはコーチ役の名前もミート君である。たしか私が高校生ぐらいの時に週刊少年ジャンプで連載が始まっている。

私は当初、あまり面白いと思えず、流し読みしていた程度の漫画であった。コメディーとしては中途半端な笑いしか取れないし、ストーリーに矛盾が多すぎて素直に楽しめなかった。だから、ジャンプ独特の人気投票システムで、いずれ消えゆく漫画だと考えていた。

初めは落ちこぼれ超人のキン肉マンが、暢気に地球の生活を楽しみながら怪獣退治を時々やっているという、ほのぼのコメディだったように思う。ところが途中から妙にプロレス臭くなってきた。

このへんから読者から超人のイラストを募集したりして、そのイラストが超人として漫画に登場するようになり、不思議なほど人気が出た。超人トーナメント戦あたりになると、もうコメディ色は消えて格闘対決漫画となっていた。

やがて悪魔超人とか、完璧超人とかが出てくると、もう何が何だか分からない状況設定になっており、ストーリーにもかなりの矛盾が生じていた。私は案外、この手のストーリー上の矛盾が気になる性分なので、少し読むのが辛くなっていた。

しかし、驚くべきことに、あるいは呆れたことに、このストーリー上の矛盾はほったらかしにして物語は進んでいった。私は「おい、おい、いいのかよ、こんないい加減でさ」と毒づいていたが、ジャンプ編集部も公認のでたらめぶりであった。

後にジャンプ編集長の書いた手記などを読むと、とにかくストーリーに勢いがあれば多少の矛盾には目をつぶって話を進めさせたそうだ。そういえば、あの頃ジャンプで人気だったのは「ギャラクテイカ・マグナム!」と叫ぶと対戦相手が宙を舞う異端ボクシング漫画とか、攻撃こそ最大の防御なりを実践する暴力刑事漫画であった。

つっこみどころが多すぎて、つっこむ気持ちが萎えるほどバカバカしい破天荒なストーリー展開こそが、あの時代のジャンプの特徴であった。だからこそだろう、本来コメディ漫画であったはずのキン肉マンが格闘対決漫画へと変貌を遂げたのは。

ただ、この漫画にあまりに拘り過ぎたのか、作者のゆでたまごは一時期スランプに陥っていたらしい。しかし、同じ集英社の週刊プレイボーイ誌にキン肉マンの息子を主人公に据えた漫画を描きだして、再びブレイクする。

ジャンプと異なり、青年層から大人を読者層とするプレイボーイ誌に掲載されていたにも関わらず、お色気シーンは皆無の友情、努力、勝利の方程式に忠実なジャンプ路線の漫画であったが、やはり結構な人気を得た。

なぜなら、昔子供の頃にキン肉マンを読んでいた読者が大人になって手に取ったプレイボーイ誌に、昔懐かしいキン肉マンの息子が活躍しているのだから読まずにはいられない。

プレイボーイ誌の編集部の狙いは見事に当たり、二代目キン肉マンは見事なヒット作となった。

ただ、作者のゆでたまごの絵の力量は、デビュー当初とほとんど変わらず、またストーリーのワンパターン的進行も変わりはない。ちょっと呆れてしまうが、変わらないからこそ変わらぬ人気を得たのだとも思う。

その意味で稀有な作品だと思いますね。

コメント (1)
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