ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

東京喰種 石田スイ

2013-11-21 13:54:00 | 

多分、人間の肉って相当美味しいと思う。

ただし、その人間の食生活次第だと予想している。だいたい牛でも豚でも、美味しい肉は草食主体で、多少の雑食が望ましい。ダメなのは肉食主体の生き物だ。不思議なくらい肉食動物の肉は美味くない。

特に肉しか食べない動物の場合、その肉は美味しくない。ライオンやトラの肉なんて、臭みが強すぎて食べられたものではないらしい。ただし雑食なら良し。有名なのはクマで、それも冬眠直前の肥えた奴が美味いらしい。

私は未経験だが、このクマ肉の赤身は噛めば噛むほどに芳醇な肉汁にあふれ、しかもあっさりとした食べ口で最高級の牛肉に勝るとも云われる。もっともクマ肉自体、滅多に出回らないし、詳しい人の話では射殺した後の血抜きを上手にやらないと臭みが残るので、どのクマでも美味しいという訳でもないそうだ。

で、我らが人間様だが、こいつら究極の雑食性。というか、えげつないほどに何でも食う悪食でもある。しかも野生なら生きることを許されないほどの怠惰な生活も可能にする奇妙な生き物なので、その肉は個体差が大きいと予想される。

でも適度に運動をし、野菜など穀物を豊富に食し、時折肉や魚を食べる人の肉は、まず間違いなく美味いはずだ。時折インドやアフリカで聞く人食いライオンや、人食いトラなんざ、人肉を覚えると他の獲物には手を出さないという。こりゃ鉄板で美味い肉確定である。

それでも、多分私は人肉は食べないだろう。

多分・・・と曖昧な言い方をするのは確信がある訳ではなく、むしろ戸惑いと疑問があるからだ。なぜ、人は同じ人の肉を食べてはいけないのか。その根拠が分からない。

遭難しての危機的飢餓に襲われた極限状況なら分からないが、平時ならば目の前に如何に美味しげな料理の皿が出されても、それが人肉だと知れば食べるどころか吐くかもしれない。だが、知らなければ、美味しいと食べてしまうのではないかとの恐れが脳裏を離れない。

実際、シナでは古来より人肉料理はひそかに食べられてきたのは有名な話だ。かの地では人食は禁忌とされていないので、飢餓時は当然のこと。驚くべきことに、比較的最近まで人食いの話はあった。

これを単純に野蛮だと非難する気にはなれない。同族喰いが何故いけないのか、その根拠はそれほど明快ではないと思うからだ。

表題の漫画は、そう遠くない未来の東京で人類は、グール(喰種)と呼ばれる人食いの怪物との共存を止む無くされている。主人公の少年は普通の人間であったが、事故に遭い手術を受けて後、急に普通の食事が食べられなくなった。

手術前は美味しかった食事が、食べても気持ち悪くて吐き戻してしまう。彼の目には人間たちが美味しそうな肉をしていることを気が付かずにはいられなかった。どうやら手術の際、何らかの意図によりグールの細胞か何かを移植されたらしい。

半分は明らかに人間なのだが、残り半分は人食いであるグール(喰種)となってしまった主人公は、怒りと戸惑いと苦悩のなかで苦悶しつつも、新たなる人生を彷徨いだす。

普通の人間に、自分が半分はグールであることがばれたら無事ではいられない。一方、普段は人間同様の姿をしているグールたちから、自分が仲間だと認識されるかどうかさえ分からない。

人間を襲って食べたいと想いながらも、それをすれば人間ではいられないとの予感に怯える主人公。一方、そのグールを捕獲、抹殺することを特命とする特殊捜査官の捜査の手が近づいていることも予測できた。

どうしたらいいのか。何故自分はグールに仕立てられたのか。分からないことだらけのなか、主人公は必死で逃げ、生き延びることを覚悟する。

ちょっと気持ち悪いと思いつつも、毎週読んでしまう気になる漫画がこれです。浮ウよりも気持ち悪さが先立つ、困った漫画でもあるので、読者を選ぶ漫画でもあります。ちなみに気持ち悪さは、怪物であるグールではなく、それを追い詰める人間の側だから性質の悪い漫画ですよ、これ。

コメント (2)
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