ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

第二の金融緩和

2014-11-06 16:05:00 | 経済・金融・税制

多分、一過性の効果しかない。

先週末、突如発表された日銀の追加金融緩和策により日本のみならず、世界中で株式市場が高騰したのはご存じのとおり。

しかし、現在の景気の停滞は資金不足が原因ではない。消費税の増税による景気の冷え込みの影響はあるが、根幹的には総需要不足である。言い換えれば、欲しいものがない、だから買わない。

実際、欲しいものが出れば売れている。妖怪ウォッチにせよ第三のビールにせよ、売れているのは確か。またご当地もの、レアものの食品とかは、行列が出来るほど売れている。欲しいものがあれば、並んだって買うのが日本の消費者だ。

ところが、それでも好景気観に乏しいのは、これまで日本の景気をけん引してきた生活家電、車、住宅が売れないからだ。

無理もないと思う。家を見渡せば大概の家電製品があり、故障以外で買い替える気は起こらない。車に至っては、免許を持たない若者が増えるばかりで、売れるのは利幅の薄い軽自動車ばかり。都会でも10軒に1軒が空き家であり、少子高齢化が進行中ならば無理に家を買う必要はない。

つまるところ、日本は既に社会全体が高齢化し、停滞化し、変化よりも安定を求める傾向が顕著なのだ。そうなると輸出以外で設備投資が伸びるわけもなく、むしろ円安による輸入価格の上昇が、原材料の値段を押し上げ、ガソリン、小麦、大豆などを値上げさせる。

実質賃金が増加したのは公務員と一部の大企業のみであり、その給与でさえ社会保険料の値上げで目減りしている。これで景気が良く感じられたら、私はその方が不自然だと思う。

結果、黒田バズーカとも呼ばれた今回の日銀の金融緩和も、一時しのぎの効果しかない。

だが、日銀及び財務省はそれでもかまわないのだろう。要は12月までに景気が現状を維持していれば、来年10月の消費税再増税にゴーサインを堂々出せる。それが今回の金融緩和の最大の狙いではないか。

私は安倍政権は、前政権に比べればよくやっている方だと考えているが、あまりに財務省の描くシナリオに素直過ぎると思う。今回の金融緩和による通貨の大量発行は、国債の買い入れに充てられ、市場には出回らない可能性が高い。

なぜなら低迷する景気を受けて税収は増えず、一方補正やら追加やらの財政支出は増える。そうなれば国債発行して歳入不足を補うしかない。その国債の買い手は、まず金融機関であることを思えば、その資金に今回の金融緩和による増発紙幣が充てられるのは必然である。

つまり、国民の大半には無関係であり、実質所得が伸びない以上、消費も増えるはずはなく、企業の設備投資も低調に終わる。

ただ、私はそれほど絶望している訳ではない。円安により外国人旅行客が増えているのは、ニュースなどで報じられているとおり。それだけではない。外国人による不動産購入も確実に増えている。円安は、外国人投資家にとっては絶好の投資チャンスでもある。

それは国内景気を押し上げる強い要因ともなりうる。この機会を逃さず、これまで以上に投資環境を整えれば、日本にもまだまだ成長の機会はあると思う。

その障害になっていることの一つが印鑑である。先進国で「印鑑」を公式な証明として使っているのは日本だけだ。印鑑証明付の印鑑の押印がないと、不動産登記などを法務省は受け付けない。これが外国人にとっては、殊の外障害となる。

ほとんどの国は、サイン証明であることを思えば、これは早急に改善する必要がある。ちなみに海外居住の日本人は印鑑証明がとれない(国内に住所がないため)ので、領事館で領事立会いの下でのサイン証明が必要となる。これまた数万円の経費と時間がかかり、大きな障害となっている。

PCスキャナーの発達により、印鑑の印影なんざ簡単に偽造できる時代だからこそ、今や印鑑には実質的な法的担保力は薄くなっているのが現実である。それでも法務省や銀行は印鑑に拘る。印鑑を廃止しろとまでは言わないが、サイン証明も認めるべきだと思う。

これは政治が主導して進めないと出来ないことだ。安倍政権には是非取り組んで欲しいと思います。

コメント (2)
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