十代後半、高2から大学浪人にかけての3年余り、パチンコに熱中していた。
その時の経験から断言できるのだが、私はギャンブルに向いていない。ギャンブルを楽しもうとせず、結果の勝ち負けにこだわってしまう。要するに出玉を換金して、収支が黒になれば勝ちだし、赤字ならば負けだ。
負けないために私は相当に努力した。釘の変化には細心の注意を払うのは当然であり、毎日行きつけのパチンコ屋の台をチェックして、どの台が良く出て、どの台が出なくなったのかをメモに付けて確認した。
当然、出玉率のイイ台を取るために開店前からパチンコ屋の前に並び、下手すると閉店間際まで店内にいる日もあった。高2、高3の頃はそれほどでもなかったが、時間の自由が利く浪人生であった時は、それこそ勉強時間よりもパチンコ台の前に座っている時間のほうが長かった。
受験生として、それは不味いとの自覚はあったが、勝つこと(金を儲けること)に囚われて、なかなか止めることが出来なかった。実際、私はけっこう勝っていた。当時、購入した50ccのスクーターの代金は、パチンコの儲けで購ったことも自信につながり、止めにくかった理由である。
しかし、某繁華街の駅前のパチンコ屋で嫌な体験をしたのを機に、パチンコは辞めてしまった。後2か月で大学受験だし、タイミング的にも良かった。その時点では、まさかパチンコをこのままやらなくなるとは思っていなかった。
ところが、大学では部活とバイトが忙しく、とてもじゃないがパチンコに時間を費やすことが出来なくなった。情報に疎くなるにつれ、勝つのが難しくなるのは分かっていたので、気が付いたらパチンコからは完全に足を洗ってしまうこととなっていた。
その後、十数年パチンコとは全く無縁であったのだが、佐藤税理士事務所には顧問先にパチンコ店があり、今度は経営者サイドから係ることになった。これは、これでひどく新鮮な経験であった。
私が驚いたことの一つに、利益率の低さがある。もっと儲かっていると思い込んでいたのだが、思いのほか利幅は薄かった。パチンコとは貸し球業である。顧客にパチンコ玉を有料で貸して、パチンコ台で遊ばせる。
もし客がパチンコ玉を増やすことが出来れば、それを景品に交換できる。その景品を第三者に買い取らせることで、客はお金を得る仕組みである。ちなみに、その景品は、卸業者を経て再びパチンコ店が買い取る。
つまり、パチンコ店の粗利は、客からの有料の貸し玉料金収入と、景品の買い取り支出の差額で計算される。景品の値段は一定なので、店の利益は客が如何に多く金を払って遊んでくれるかにかかっている。
だからこそ、魅力的なパチンコ台が重要になる。そのパチンコ台が異様なほど高額になったのは、CR機導入後だと思う。かねてから警察はパチンコ業界を暴力団の資金源だと見做して、その排除に力を入れてきた。
結果、プリベイカード方式を導入することになったのだが、これが当初不評であった。パチンコ店としては、ただでさえ高額な台を導入した以上、不評なままでは困る。そこで登場したのが爆裂機と云われたパチンコ台であった。
要するに短時間で爆発的に玉が出るパチンコ台である。この魅力につかれたパチンコ・ファンは多かった。短時間で稼げるので、プリベイカード方式が必需になったのは確かだ。しかし、その一方で射幸心をあおり過ぎる点が問題視され、警察は規制に入りだした。
警察の言い分も分かる。この爆発的に出るCR機の登場により、客が消費者金融に金を借りてまでしてパチンコをするようになったからだ。当然に自己破産するほどパチンコに熱中するパチンコ中毒者が続出し、話題になったのだから規制をかけた。
だが、ひどい手前勝手な理屈だと思う。元を糾せば警察がプリベイカード制度を導入し、従来より製造費のかかるCR台をパチンコに普及させたことが最大の原因だ。
当初人気がなかったがゆえに、経営危機を予感したパチンコ業界が爆発的に玉が出るように改造したわけだが、この改造は警察(正確には保通協という外郭団体)の認可を受けている。云わば警察のお墨付きであった。
これ以降、警察の過剰な介入に嫌気がさしたパチンコ店のなかには、違法にされてしまった爆裂機に改造する違法行為が横行するようになった。違法プログラムから、違法ROMカードなど私がパチンコをやっていた時には全くなかった新しい手口には驚かされるばかり。
表題の書は、パチンコ業界誌の記者として活躍し、現在はフリーの立場となったジャーナリストによるパチンコ業界の内部事情を書き記したものだ。違法と合法の境目に咲いたアダ花のようなパチンコ業界について、素人にも分かりやすく解説している。
パチンコの攻略には、まったく役に立たないが業界の事情を知るにはよく出来ていると思います。興味がありましたらご一読のほどを。