あれれ、普通になっちゃったぞ。
近年、私が読んできた小説のなかでも、西尾維新の文章ほど奇天烈にして新鮮なものはなかった。過剰に饒舌でありながら、その文体のもたらすリズムは新鮮で鮮烈でさえあった。
なかでも出世作である戯言シリーズは、6話9冊あるが4回も再読している。癖になるというか、はめられた気がして現在は本棚の奥に封印している。他にも「君と僕」シリーズなどもあるが、はまるのが嫌で読まないように意識して避けていた。
しかし、たまたま安値で入手したのが表題の刀語(カタナガタリ)シリーズの一作目であった。これも警戒して未読山脈の奥にしまいこんであったのだが、先日たまたま山脈に手を伸ばしたら、偶然手に取ってしまった。
これもなにかの縁だろうと思って読みだしたのだが、驚いたことに普通の日本語になっていた。いや、ところどころに西尾維新独特の言い回しの片鱗はあるのだが、明らかに普通の文体なのだ。
おかげで読みやすいことは確かだが、ただのエンターテイメント小説になってしまった。これじゃ普通のライトノベルと変わらないと不満を言いつつ、短時間で読み終えてしまった。
物足らない・・・続きが読みたくなった。
これこそ、作者の意図するところであったのか。見事にはめられてしまったのだが、あまり悔しくはない。なにせ後11冊楽しみが残っているのだから。