少し意外であったのは、自民党が思ったよりも議席を減らさなかったことだ。
今年は消費税増税と円安のダブルパンチによる不況が厳しかった年である。良いのは株価と土地取引だけで、利益を出している大企業でさえ楽観視はない厳しさである。
アベノミクスの恩恵などまるで感じられない地方の惨状を思えば、自民党に厳しい審判が下されても不思議ではなかった。にもかかわらず、単独でも過半数であり、公明党と合わせて三分の二を確保してしまっている。
原因は、おそらく野党に対する信頼感のなさであろう。
日本には反・自民党感情が根強く、自民党でなければ誰でもいいと考える有権者は少なからず実在する。真面目な人が多く、世の中善意だけでまわると思い込めるほど善人であり、愚者でもある。
善人というものは、概ね自分が善い人だと分かっている。弱者に優しく、富の偏在を憎み、争いを避ける平和主義者ではあるが、争いを収める器量には欠ける。自分が善い人だと分かっているので、自分の考えに反する相手を間違っていると、簡単に思い込める人でもある。
そして、世の中が自分の思うようにならないことを長年憎んでいる。だからこそ、彼らは選挙には熱心に投票する。山梨県や沖縄において、自民党が全滅だったのは、この熱心な反自民党票が原因である。
投票率が高ければ、彼らは少数派となるが、戦後最低の52%台ならば彼らにも勝ち目があることが立証された選挙でもある。公明党のような熱心な学会員の組織票も同様であるからこそ、得票を伸ばせた。
そして久しぶりに議席を大幅に伸ばした共産党は大喜びである。志位書記長は「有権者は、自共対決を望んでいる」などと得意げに語っていたが、正直勘違いだと思う。
有権者が日本共産党に望むとしたら、それは与党の足の引っ張り役であって政権担当能力には、まるで期待をしていない。今回のような低投票率であったからこそ、熱心な組織票で支持される共産党候補が当選できた。
それと、おそらく今回はあまりにだらしない他の野党に見切りをつけた有権者の、自民でなければどこでもいい票を獲得できたのではないかと思っている。
党首が落選した民主党だが、改選前よりも議席は増やしている。これは、やはり労働組合等の組織票の威力が、低投票率により高まっての成果だと考えて間違いないだろう。
みんなの党のごたごた騒ぎが、野党勢力の結集をおかしくさせたことも大きい。自民党は嫌だが、共産党も嫌という有権者には、民主党しか選択肢がなかったのだろう。
維新の会は、元々アンチ民主として価値があったのであって、反自民を掲げれば、他の有象無象と本質的に変わりはなく、そこを見限られた結果だと思っている。
次世代の党の大きな敗退は、この国の国家意識の薄さの象徴に思える。有権者の大半は、事なかれ主義に堕しており、潜在的な同意はあれども、それは現時点では早すぎると考える大人しい有権者の意識の表れだと判じている。
いくら三分の二を確保したとはいえ、まだ改憲には早すぎると有権者が考えているからこそ、次世代の党は敗退したと私は考える。
とにもかくにも、後しばらくは安倍政権は安泰であり、マスコミの反安倍報道は功を奏さなかったことが立証できた結果でもある。
個人的には、あの管直人が小選挙区でせっかく落選したのに、比例で復活したのだけが非常に不満な選挙でした。やっぱり比例並立って問題あるんじゃないかね。