習うより慣れろ、は確かだと思う。
今から十数年前だが、私は仕事の必要上から外国語を片言ながら4か国語程度使わざるを得なかった。福建語と北京官語と英語とタガログ語(フィリピン)なのだが、福建語と北京官語はシナ語なので、三か国語かもしれない。
ただ、この両者は同じシナ人同士でも通じないくらいに異なる言語である。あの頃、歌舞伎町で変なイントネーションの日本語で言い争っている東洋人がいたら、ほぼ間違いなくシナ人だった。
福建と広東なら同じ南方系ということで、ある程度通じていたようだが、北京や大連など北方出身者には外国語同様で、仕方ないので日本語でやりとりしていたらしい。
微笑ましいなどと呑気なことは言ってられない。なにせ、北方系のシナ人と南方系のシナ人では気質がまるで違うため、非常に仲が悪かったのだ。これが後の歌舞伎町の青竜刀事件へと発展することになる。
間接的ながら彼らの飲食店に関わりがあった私は、あれ以降シナ人からみの仕事は一切受けていない。少々残念に思わないでもないが、争いに巻き込まれるのは勘弁である。
一方、英語とタガログ語は外国人ホステスの申告からみで、今でも若干関わっている。守秘義務から多くは書けないが、私の経験からすると英語が母国圏の外人よりも、非英語圏の外国人の話す英語のほうが分かりやすい。
英語と一口に言うが、実際に使われている英語は、世界各国でかなり発音が違う。日本人はやたらと発音を気にするが、正直気にし過ぎだと思う。綺麗な発音に気を配るくらいなら、なんでもいいから喋って、意思を伝えようとする努力のほうが有意義だと思う。
実際、日本にいる外国人は、日本人の英語の発音がヘンなことなんて、ほとんど気にしない。むしろ黙っているほうを嫌がる。私の場合、仕事に関連する英語は限られているので、その範囲でならばなんとかなった。
意味が通じない時は、メモに書いてあげればなんとかなった。っつうか、読み書きならば日本人の英語力は、決して低くないようだ。
ただ、日ごろから外国語に接していないと、すぐにダメになる。年々記憶力が低減している私なんざ、3か月離れると、もう分からなくなる始末だ。特に心臓をやって以来、酒を飲むことを控えるようになったので、外国人ホステスとの意思疎通には難儀している。
だから確定申告の時なんぞ、彼女らに子供を連れてきてもらって通訳してもらうこともある。だいたい、旦那が日本人の場合、その子供は外国語と日本語の両方を使うことが多い。
正直、その国語力には不安を感じないわけではないが、話したり聞き取る能力は、私なんぞよりもはるかに上である。子供だけに税制度や、会計に関してはあまり当てにならないが、そこは書いて分からせる。習うより、慣れろの精神があれば、けっこう何とかなるものだ。
それでも困るのは、微妙な言葉の用法だ。些細なことなのだが、Theを付けるべきか、あるいは過少と過小の違いとか、小さなことが案外と分からないことに出くわすことは多い。
そんな微妙な違いを指摘し、楽しんでいるのが表題の漫画家の配偶者であるトニー氏である。自ら語学おたくと称するように、普通気が付かない言葉の不思議に疑問を呈し、時には楽しみ、奥様に同意を求めるが、奥様である小栗女史は、いささか煙たがっているのがおかしい。
でも、それをネタに漫画にしてしまうところが逞しい。
外国人と接することは、案外とストレスになることも多い。しかし、その擦れ違いを楽しめれば、思いもしなかった側面から、今まで気が付かなかった思わぬ日本に遭遇できる。
まァ、とりあえずは、為せば成るの心意気で楽しみましょう。