ヌマンタの書斎

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襲撃!異星からの侵入者 ディビット・ファインタック

2014-12-12 12:56:00 | 

私の部屋の片隅にある未読の本の山の中で、一番の古株が表題の書である。

購入したのは、かれこれ4年ぐらい前なのだが、つい先日まで未読山脈の麓に眠っていた。決して嫌いではないのだが、読むのを躊躇っていたのには訳がある。

まず、上下二巻で1400頁に及ぶ大作であること。そして読み出したら止まらない魅力があること。これでは、他の本を読めなくなるではないか。

これだけではない。主人公たるシーフォートは、私の知る限り、これほど頑固で一徹で、反省癖があり、敬虔でありながら、断固たる行動派のヒーローであり、それでいて自らをヒーローとは認めない、もの凄い変わり種なのだ。

頑迷に過ぎるほどの自虐癖があり、それでいて自らが正しいと信じた道には、迷わずに邁進する実践の人でもある。自省、自立、自主を絵にしたような、他に類をみない変人ヒーロー、それが銀河の荒鷲ことシーフォートである。白状すると、積極的に読みたいヒーローではない。

それでも不思議なことに本国アメリカでも、けっこう人気がある。率直に言って現在のアメリカ人の思い浮かぶヒーロー像からは、相当にかけ離れているように思う。少なくとも、ワシントンやNYではお目にかかれないタイプだとさえ思う。

シーフォートの清廉潔白さは、かつてアメリカに入植したピューリタン的な価値観を色濃く反映している。それは、現在のアメリカでは、もはや希少価値といっていいほど稀な存在だと思う。

だからこそ人気があるように思える。かつては気鋭の青年士官候補生であったシーフォートも、今や老齢に近く、痛々しいほどの衰えが目立つが、変わらないのは、その厳しすぎるほどの自省、自立、自首の精神だ。

もっとも、今回の主役はかつてシーフォートのもとで悲劇の死を迎えたデレク・カーの息子である。もちろんシーフォートも活躍するが、この息子の迷走と愚行と直情が、若かりし頃のシーフォートを思い起こさせて、それが非常に楽しい。

多分、幾つかの理由からハリウッドが映画化することはないように思う。それほど現在のアメリカの価値観とは遠く離れた存在である。しかし、それを好ましく思うアメリカ人が少なからずいるのも確か。

私が知る限り、アメリカ以外ではありえず、そのアメリカでも希少なヒーロー、それがシーフォート。興味がありましたら是非どうぞ。長編ばかりなので大変ですけど、読みがいはありますよ。

コメント (10)
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