タイトルだけ。
今、子供たちの間で人気のアニメに「マギ」がある。アラビアンナイトを素材にした冒険もので、けっこう人気を博している。その作者がブレイクするきっかけになったのが表題の作品。ただし、私の評価はきわめて低い。
子供の頃に暴力に対してひどいトラウマを負った主人公は、古来より続く伝統武撃フ道場主の息子。その武道嫌いの息子の下に押しかけてきたのが、これまた伝統武道を継承した娘さんであり、主人公の許嫁という設定である。
この武道嫌いの主人公を巡るドタバタ劇なのだが、率直に言ってキャラクターのデザインばかりが目立ち、肝心のストーリーが竜頭蛇尾に終わっている。そのせいで、当初は読んでいたのだが、そのうち流し読みになり、最後はざっと目を通しただけだ。
私がこの漫画をあまり好かなかったもう一つの理由は、これが今どきの男の子が求める理想像なのかとの疑いが拭えなかったからでもまる。情けない主人公に替わり、甲斐甲斐しくも健気な押しかけ嫁の奮闘ぶりが、読者から受けていたのは確かであった。
この漫画、隔週発売のヤング・ガンガンというマイナーな漫画雑誌に連載されていたのだが、この作品が初のアニメ化されたものであった。それだけの人気はあったようなのだ。それが私は気に食わなかった。
ヤング・ガンガンは他のメジャーな少年漫画雑誌や青年漫画雑誌からはデビュー出来なかった若手漫画家を数多く拾い、デビューさせている。そのなかでも、最初のTVアニメ化作品がこれでは、他の硬派な漫画「死が二人をわかつまで」や「魍魎の函」などが報われないではないか。
そう思っていたので、どうも好きになれなかった。しかし、若い読者の思いは別であったらしい。それでも敢えて言うが、この漫画タイトルの奇矯さだけが目立ち、肝心のストーリーが力量不足だ。
その後、作者の大高忍は週刊少年サンデーに移って大ヒットとなっている「マギ」を発表している。こちらのほうがストーリー性も高く、作品の質ははるかに上だと思う。もしかしたら編集者の技量の違いもあるかもしれない。
余談だが、タイトルを「スモモも桃も」だったらどうなのだろうと思うことがある。やはり「すもももももも」だからこそ耳目を集めたと思うのは、私の偏見なのかな。