四年前だが、ユーロ危機が世界中を駆け巡った時のことだ。
ある金融機関の会計担当者に、不良債権の評価はどうなっているのかを尋ねたところ、まったくしていないと言われて唖然としたことがある。
もちろん当人も困惑していたが、不良債権の評価の基準が出ていないため、明確な数字が出せないので仕方がないようだ。これがアメリカの不良債権ならば、現在価値から割り出した不良債権の評価額が算出できるのだが、当時のヨーロッパには明確な基準がなく、貸倒引当金を計上したくても出来ないと嘆いていた。
その時は、本当かよ?と疑問に思っていたが、実際のところアイルランドの国債や、ギリシアの国債は、様々な金融商品に分散され、更にリスクヘッジと称して小口化されて、その証券が複数の投資信託などに紛れていたために、不良債権の個別の金額を評価することが難しかったようだ。
そして、呆れたことに破綻して初めて、その影響の大きさに気が付く体たらくであった。だが、ユーロ及びドルは大幅に紙幣を増刷させて、この金融危機を乗り切った。
一方、ひたすらに独自の基準でユーロ危機の日本国内への影響は少額だとして、デフレ政策を維持し続けたのが当時の民主党政権下での白川・日銀であった。しかし、直接にアイルランドやギリシアの国債を保有していなくても、それらの国債に分散投資していた金融商品を多数抱えていた日本の金融機関は後になって慌てる羽目に陥った。
おまけに日銀は低金利デフレ政策を続けていたから、嫌々買わされる日本国債の収益性の悪さとも相まって、日本の金融機関の財務体質は悪化する一方であった。
ようやく民主党が下野し、安倍第二次政権が成立し、黒田・日銀が誕生すると、すぐに通貨発行量を増やして、擬似インフレ状態を目指した。これでようやく金融機関は一息就くことが出来た。
しかし、ここにきて緊縮財政に呻吟するギリシア国民の意を受けての新政権が誕生したギリシアでは、従来の緊縮財政を否定している。ユーロの圧力を嫌がる国民の意を受けて、盛んに債務削減などを求めているようだが、ドイツやフランスなどは冷ややかだ。
もし仮にユーロを抜けて元の通貨に戻れば、劇的な貨幣価値の下落によるハイパーインフレになり、今以上にギリシアは疲弊すると読んでいるからこそ、西欧は冷ややかなのだろう。
だが、果たしてそれで済むだろうか。今年年初、私はいつものようにCNNやBBCを始めとする海外のメディアをぼんやりと聞き流していたが、気になったのが今年はヨーロッパが危ないと論じる識者が多かったことだ。
同時通訳なので、多少の末フ齟齬はあろうかと思うが、単にギリシア危機だけでなく、ユーロ全体に波及することを危惧する論評が目立った。イスラム国やボスコハラムの危機を訴えるものもあったが、全体としては西欧の混乱を予測するものが多かった。
率直に言って、私にはそこまでの危機なのか確信が持てないでいる。ある種の情報操作なのか、それとも本当に危ないのかさえ判別つかない。けっこう気になっていたので、少し調べてみると、東欧向け債権が危ないらしい。
金融情報の開示がアメリカなどに比べて不徹底なヨーロッパでは、債権の焦げ付き具合さえ完全には開示されていない。ましてや、東欧の国々ともなれば、その情報はかなりのバイアスがかかっていることは容易に想像がつく。
ギリシア発の第二次金融危機は、もしかしたらパンドラの箱を開けてしまうことにつながるのか?
例によって、能天気な日本のマスコミは当てにならないので、私なりに調べていこうと考えています。