ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

ウクライナ危機に思うこと

2015-02-17 12:00:00 | 社会・政治・一般

一度火が付いた民族感情は、簡単には鎮火しない。

十数年前のことだが、新宿歌舞伎町の大型キャバレーで顧客でもあるホステスさんと飲んでいた時だ。その時、ヘルプとして席についたのが金髪のロシア人女性二人であった。

どこから来たのかと訊くと、一人はレニングラードだと言い、もう一人は「ウクライナのキエフです」とわざわざウクライナを強調して答えたのが印象的であった。どうやら場を仕切る日本人のホステスさんから、二人ともロシアから来たのと紹介されたのが気に食わなかったらしい。

率直にいって、ロシアもウクライナも人種的には、そう変わらない。言語だってロシア語であり、キリル文字を使っている。同一文化圏の人たちであるのは間違いない。件のホステスさんの話では、普段は仲は良く、それゆえに二人一組でヘルプに付けるのだが、民族感情だけには難儀するとのこと。

ベルリンの壁が崩壊し、なし崩し的にソ連が崩壊して、各共和国が独立したことで民族感情に火が付いた。歴史を遡れば、ウクライナには、かつてキエフ公国という由緒ある国が存在しており、リトアニア大公国やメポーランド王国の支配下にあったこともあり、ロシアに属するようになったのは、意外と遅くて17世紀以降だ。

社会主義という人造的な概念が崩壊してしまうと、ロシア帝国に吸収されたウクライナの民族感情が先祖がえりのように甦り、兄弟憎悪にも似た複雑な心境を形作る。

反面ロシアからすると、豊かな穀倉地帯を持ち、鉱物資源にも富んだウクライナの地は重要で、特に黒海沿岸地帯は軍事的にも重要度が高く、そのためロシア化を推し進めていた地域でもある。

だから容易に手放せるはずもない。一方、ウクライナにとってもロシアとの関係は重要で、電力やガス需要の大半をロシアに頼っている。人為的にロシア化が推し進められたせいで、親ロシア感情の強いウクライナ人もいれば、反ロシア感情の強いウクライナ人もいる。

ナチス・ドイツの侵攻時には、両者は手を取り合い必死で戦い抜いてウクライナの地を守った歴史を持つ一方で、ロシアの辺境の地とされていることに屈辱感を覚えるウクライナ人は少なくない。

それゆえに両者の対立は、他国からはうかがい知れぬほどの根深い対立と、断ち切れぬ親愛の情を並立させている。この問題は、そうとうに長引くと予想できる。

ただ、唯一幸いなのは、宗教上の対立を含んでいないことだ。これだけでも相当に違う。この問題が浮「のは、ロシア周辺諸国に対する影響が大きいからだ。それゆえにロシアは悪しき前例には絶対にしないと覚悟を決めている。

一方、そのロシアの覚悟を知りつつも、国民相手に下手を打てないウクライナ政府の苦しさもある。それゆえに、明快な解決策は見出し得ない。この問題を周辺の国々や、抑圧されていると意識している少数民族は、明日は我が身との思いで、注視していることは間違いない。

せめて経済が好調ならば多少の不満は緩和されるが、欧州の景気は決して良くない。それどころか東欧向け債権の焦げ付きが凄まじいと予測されている。やはり、今年は欧州の政治的な変動に注意を払うべきなのだと私は考えています。

コメント (4)
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