子供って奴は天性の演技者だ。
とりわけ女の子は、場の空気を読み取る能力が長けているため、殊更その演技力に磨きがかかる。傍から見ていると、その演技はあざとくみえるほどだが、魅力的なのは確かだ。
たいがい、男の子は割を食う。実際、私がそうだった。場の空気が読めないから、場違いなことを言い白けさせ、周囲に迎合しないから冷たい視線を受ける子供が私だった。
そのせいか、意識して演技する女の子に対して、妙な隔意がある。嫌っているわけでもないが、素直にその演技を受け入れられない分からず屋が私であった。
だからだと思うが、表題の映画で主役を演じる黒人の女の子の魅力も素直に認めがたい。蓮っ葉な女を演じるキャメロン・ディアスの方にこそ妙に肩入れしたくなる。だが、分かっている。どちらも実は同じである。
自分を魅力的にみせてチャンスを捕まえようとするアニーと、そのチャンスを逃して惨めな境遇に甘んじる里親役のディアスの姿はカードの裏表である。
アメリカはチャンスを与えてくれる国だと考える人は多い。そのチャンスには成功へと至るものと、失敗の陥穽に至るものとの二種類があることもまた確かである。
私はどうしても、この苛烈なまでに二択に拘るアメリカ社会には馴染めない。今少し、穏やかな生き方だってあると思うし、多くの平凡な人々にとっては、そのほうが幸せだと思う。
ところで表題の映画だが、元々は世界大恐慌に喘ぐアメリカ社会において、捨て子としての暗い境遇から、持ち前の明るさで幸せを掴もうとする女の子を描いたミュージカルが元となっている。今回で3回目の映画化だそうだが、もしかしたら歌の上手さというか表現力では、今回のアニーが一番かもしれない。
実際、Tommorowを唄うアニーの姿には思わずも、見入ってしまったほどだ。ミュージカル映画としては、とても良い作品だと思います。観て後悔することはないと思うので、機会がありましたら是非どうぞ。