奇想天外も度を越すと恥ずかしくなるものだ。
だが、十代前半の頃、私は好んでこの手の小説をよく読んでいた。通称スペースオペラと揶揄されていたのだが、一応空想科学小説である。ただし、科学の片鱗も感じられない。
荒野で呆けていたら何故か火星の大地に降り立っていたジョン・カーター(火星のプリンセス)がそうだし、銀河帝国の王女と恋に落ちて、宇宙を救った保険会社のサラリーマンのジョン・ゴードン(スターキング)もそうだ。
あまりにご都合主義というか、大人の童話にしては教訓もなにもない。ただ、ハラハラドキドキの単なる冒険活劇に過ぎない。でも、中学生の頃の私は、けっく夢中になって読んでいた。嫌だった勉強からの逃避の側面もないではなかったが、空想に夢を膨らませて、遥かなる宇宙を想うことは、そう悪いものではなかったと記憶している。
そして間違いなくこの映画の製作者も、若かりし少年時代に、スペースオペラに夢中になっていたと断言できる。なにせ主人公は毎日、トイレ掃除に明け暮れるうら若き乙女だ。口癖は「こんな人生、もう嫌」だ。
その主人公が気が付いたら、宇宙をまたにかけた陰謀のなかに放り込まれて、宇宙版空飛ぶ狼男に助けられて世界を救う。それも最新のSFXを駆使した映像技術で、ド派手なカタストロフィまで付いてくる。
こんなおバカな映画を作った人間は、間違いなくスペースオペラを読みふけっていた少年時代を送ってきたと断言できる。スピルバーグの特撮SFに飽きた人、ルーカスの見事な冒険活劇に馴れてしまった人には、ちょっと新鮮に感じるかもしれません。
おバカな作品を楽しめる、広い心の持ち主ならば観ても損はないと思います。我こそはと思う方は是非どうぞ。