ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

アルスラーン戦記 原作・田中芳樹 作画・荒川弘

2015-04-16 12:39:00 | 

悪く云えばリサイクル商法。

でも面白いから許す、許すけど、内容分かっているから多分買わない。きっと漫画喫茶で済ませると思う。

初めて原作を読んだのは、今から20年以上昔のことだ。非常に面白かったことは今も鮮明に覚えている。逃亡中のアルスラーン王子が王宮から追放された智者ナルサスを説得する場面などは、何度読み返しても楽しい。

第一部が終わり、次の第二部が待ち遠しくて仕方がなかった。しかし、この頃から田中芳樹は、シナの古典文学の現代語版に乗り出し、資料地獄にはまったようだ。そのせいか、この「アルスラーン戦記」を始め「タイタニア」「地球儀シリーズ」などが長期にわたり中断されてしまった。

「銀河英雄伝説」という大ヒットで作家として成功したことが、作家としての評価を低めてしまったのは、田中自身の責任ではない。日本の文壇界は、未だに男女がメソメソと別れ話を修辞するのをありがたがり、社会の矛盾に引き裂かれ、押しつぶされる人間を描くことこそ文学だと思い込んでいる。

私は「銀英伝」を始めとした初期のエンターテイメント作品を高く評価しているが、それは作家・田中芳樹にとって不幸であったように思えて仕方なかった。だが、「隋唐史演戯」「海嘯」などの古代から中世のシナの物語の現代語訳で成功したことで、作家としてようやく高い評価を得たのは祝してもいい。

しかし、当初の成功とその熱烈なファンを置き去りにした罪は重い。私は最近刊行された「タイタニア」の新刊を買うのを躊躇っている。あまりに長すぎた中断は、読者に対する裏切りとしか思えないからだ。

そうこうしているうちに、かつての若いファンたちは年を取り、あまりに遅筆な田中を見限り始め出した。そして、本来、若い読者に受けるはずの初期のエンターテイメント作品さえ、忘れ去られたものとなった。

実際、現在書店の売れ行きランキングの上位の常連であるライトノベルの読者たちで、田中芳樹の作品を読んだことがない人は珍しくない。かつて小説・田中学校とまで云われ、田中作品の愛読者たちがライトノベルの作家デビューを果たしていたことを想えば、この惨状は本が売れない惨状に悩む出版社にとっては忸怩たる思いがあったのだろう。

だからこそ、新たな読者層の開拓のため、敢えて古い田中作品を掘り起こしてきたのだろう。描き手は「鋼の錬金術師」「銀の匙」で知られた荒川弘だ。原作が面白く、作画者の力量も十分なら売れないはずはない。事実、先週末からアニメ作品が放送されだしている。

多分、けっこう売れると思う。でも、私は当面手を出さない。まだまだ中断状態の作品は他にもある。これらが無事完結したら読んでやる。裏切られた、かつての愛読者の恨みは深いんだぞ。

コメント
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