ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

ゴールデンカムイ 野田サトル

2015-04-24 12:34:00 | 

もうすぐGWであり、この時期に北アルプスは上高地へ赴くと、春の芽吹き輝かしいほどに目に映る。

雪解けの水を一杯にたたえた清流である梓川は、その透明な水質と、川面に映る雪山と芽吹く緑のコントラストが映えて、目を奪われる。

しかし、この梓川の水をそのまま手にすくって飲んではいけない。実は大腸菌がかなりあり、たいていの人は腹痛を起こし、腹を下すこと請け合いである。

実は梓川は、上流に人気の山小屋やキャンプ地を抱えており、その汚水が流れ込んでいる。はっきり言えば人糞である。もちろん槍小屋などは浄化施設をもっているが、登山者のなかには川沿いの草むらで用を足す人が少なくない。

槍ヶ岳や穂高連峰で降った雨、溶けた雪水は、谷に流れ込む。その際に人糞をも取り込んで下流の梓川へ、水が流れ込むので、必然的に大腸菌が含まれた、見かけだけの清流となってしまう。

人は食料がなくても一週間くらいなら生きられる。しかし水なしでは、三日ともたない。自然のなかでは、その水を確保することすら難しい。ましてや、食料、医薬品などを野山から採取するのは容易ではない。

しかし、都市文明の発達が早く、また農村でも技術革新が少なくなかった日本では、いい意味で水や食料の確保は当たり前のように用意されてきた。国内流通が発達していたためでもある。

逆に言えば、野山の中で文明の恩恵を受けずに生き延びる技術は衰退していた。おそらく山岳地帯で生きる猟師や薬草採取を生業とする民を除けば、ほとんどの日本人は、古くから都市文明に保護されたひ弱な存在であった。

唯一、例外といえるのが遠く北海道の地で生きていたアイヌの民である。自然のなかで、その猛威に曝されながらも逞しく生きてきた荒野の民である。彼らアイヌの持つ、野生で生き抜くための知恵は凶暴なヒグマ、日本狼、荒れ狂う暴風雪、極寒の猛威にも耐えうる。

そんな野生の知恵を持ったアイヌの少女を相棒に、北海道の地で黄金を求める退役軍人が、表題の漫画の主人公だ。203高地の激戦を生き抜いて、不死身の男と呼ばれた男が、夢あるいは野望を胸に北海道の荒野に分け入り、黄金の在処を探し求める。

その黄金を欲する危ない軍人や、競争相手たち、そしてヒグマを始めとした野生の驚異に曝されながら、逞しく、図太く大地を駆け抜ける。昨年に週刊ヤング・ジャンプ誌上で連載が開始されて以来、欠かさず読み続けている作品でもある。

どのような結末を迎えるか分からないが、目にする機会があったら是非どうぞ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする