多分、ダメだろうなァ。
今年、MBLから日本球界に復帰した松坂投手だが、さっそくに故障を引き起こし、現在も復帰のめどはたっていない。下手すると、このまま引退ではないかと囁かれる始末である。
私はバックネット裏の席で、松坂の投球を生で観たことがあるが、それは凄い剛球投手であった。それなりの実績も挙げているし、日米野球での活躍も記憶に鮮明に残っている。
ただ、日本に居ることから、いささか不安定な投手だとも思っていた。三振もとる一方で、けっこう打たれている印象が強い。しかも、ホームランを打たれる場面が強く記憶に残っている。
プロ野球の世界では、情報収集と分析、対策が著しく進んでいる。何時しか松阪は、ライバル球団から徹底的に分析され、よく打たれる投手となった。もちろん松坂も西武球団スタッフの分析のもと対応している。
ただ、どうも松阪は他人のアドバイスを聞かない傾向が強いようなのだ。実際、どんなに対戦相手が情報をもって松坂に対峙しても、その直球が走っているときはお手上げだった。松坂の剛球は、小手先の対応策を蹴飛ばす威力があった。
しかし、松坂も人の子、いつもいつもストレートが走っているわけではなく、直球の調子が悪い時もある。そんな時、大概の投手は変化球主体に変えたりして、臨機応変に投げる。松坂も対応していたが、この変化球主体の時はキャッチャーのリードと、守備陣との連携が重要になる。
ところが、いつもお山の大将であった松坂は、これが苦手であった節が見受けられる。どうも直球へのこだわりが強く、どうも守備陣との連携がイマイチだった印象がある。もっとも20代の若手の時はそうでもなく、むしろ若手とはいえない年齢になってからのほうが、よくなかったように思う。
どうも、他人のアドバイスを素直に聞けない気質のように見受けられる。率直に言って、自らの剛球に自信を持つ投手には、しばしばみられる傾向である。このタイプは、徹底的に依怙地に唯我独尊で押し切るか、さもなければ軟投のピッチングに自らを変えるか、どちらかでないと潰れることが多い。
松坂はどちらかといえば、前者でありたいようなのだが、怪我の多さと故障によるブランクが長く、押し切るには実績が足りない。このままだと、チームからも冷遇されて居場所をなくし、投げたくても投げる機会がなく、引退せざるを得ない投手になりかねない。
才能は十二分にあったと思う。ただ、自己に忠実であらんと頑迷に過ぎ、聞く耳をもなたない孤独な落ち人に堕してしまったように思う。外れて欲しい予想でもある。あれだけの投手、そうそう出ないと思うからだ。
最近は、大谷とか藤浪といった意気の良い若手の投手の活躍が目立つが、松坂が彼ら若手の反面教師で終わらないことを祈って止みません。もう一度、あの剛球で完封する姿を見たいものです。