身体を動かすのは好きだが、団体競技はあまり好きではない。
その魅力を否定しているわけではない。みんなで力を合わせて勝利を勝ち取る喜びを知らない訳でもない。それでも中学以降、好きだった野球も部に入る気にはなれなかった。誘われた卓球部は、気に食わない奴と揉めて止めている。他の球技系の部にも入る気はなかった。
入部しなかった理由は単純で、レギュラーになる自信がなかったからだ。当たり前の話だが、やはり上手い奴、強い奴こそがレギュラーであり、そうでなければ試合には勝てない。
自慢じゃないが、私は反則なら得意だが、正々堂々たるプレーでレギュラーを勝ち取る自信はなかった。クソまじめに練習するのも苦手だし、身長のように努力ではどうしようもない要素があることも知っていた。
いくら運動が好きでも、試合のたびにベンチでは面白くない。だから運動部には入らなかった。もっとも本音はクソまじめに学校に通うよりも、渋谷や下北の路上や、近所の公園で悪ガキ仲間とだべっている方が面白かったからでもある。
ただ、どこで何をどう間違えたのか、私は真面目に生きる羽目に陥った。もう、元の悪ガキ仲間の輪には入れなくなってしまった。困った私が選択したのが、ワンダーフォーゲル部であった。
寒いのが嫌いなので、冬山登山は勘弁と思っていた私にとって、丁度良かったのがワンゲル部の登山であった。そして登山にはレギュラーも二軍もなかった。全員が一軍であり、レギュラーであり、補欠用のベンチなんてなかった。
とはいえ、少し後悔もある。真面目に地味に練習を積み重ねれば、私だってレギュラーになれる可能性はあったのではないか?自らの怠惰さから、必要な努力をさぼったことは事実であり、それが悔いとなって残っている。
表題の漫画は、週刊少年チャンピオンに連載されている都立のバレー部に入部した一年生が主人公だ。中学時代、一度もレギュラーになれず、高校では必ずと思ったら、新たに着任した名監督に憧れて都中学選抜のメンバーが同学年に3人もいた。
またレギュラーが遠のいたと落ち込んでいたが、実はこの主人公、とんでもない特技の持ち主であった。手首を針金で雁字搦めに固めたイメージで、その右腕から繰り出すサーブは百発百中の驚異のコントロール。
ただ、他の技量が低く、それゆえ中学時代は常にピンチサーバーでしかなかった。しかし、その驚異のテクニックに驚いた同学年の仲間たちから少しずつ学び、先輩からレギュラーの地位を奪えるかもしれないと期待に胸を膨らませている。
しかし、この主人公、他にも欠点があり、まだまだレギュラーの座は遠い。しかし、名監督の誉れ高い先生は、その可能性を見逃すはずもなく、独自の練習を課して、更なる成長を促す。
この漫画、実は私が今、一番楽しみにしている作品でもある。怠け者で、気弱なくせに短気で喧嘩速かった私に欠けていたものが、すべて表現されているような気がして、毎週目を離せずにいる。
十代のあの頃、うんざりするほどの地味な練習の繰り返しをしなかったがゆえに、私は球技から遠ざかってしまった。そのことを後悔しているがゆえに、この手の漫画には、惹きつけられずにはいられないのです。