堅守速攻、それが新しいサッカー日本代表のサッカーだと考えるのは時期尚早だと思う。
チュニジアとウズベキスタンとの親善試合を終えたわけだが、実はTV観戦はしていない。というか出来なかった。理由は簡単で、家のTVがアナログであり、もはや地上波デジタル放送が見れないからだ。
しかたないので、ネットで後日見たわけだが、画面が小さいので少々不満である。とはいえ、非常に興味深い試合ぶりではあった。基本的に堅守速攻のプレーであるが、驚いたのは中盤でのもたつきが非常に少なかったことだ。
日本は中盤に中心選手を置き、彼らを中心にボール回しをして、機を見て攻め込むスタイルを好んできた。これはラモス、名波、中村俊、そして遠藤といったチームの柱となる選手が、足元にボールを置きたがる傾向が強かったからだ。
だが、今回遠藤を外したチームであり、監督自らがかなり強硬に戦術の変更を選手に求めたことが原因であろう。従来の日本代表はボールの保持率を高め、じわじわと隙を伺うような攻め方をすることが多かった。
この攻め方は綺麗ではあったが、反面泥臭いサッカーには弱かった。まして個人の技量が上のチームに当たると、攻め手に勢いが失われて惨敗することが多かった。
トルシェエはこの戦い方を許さず、俊輔をはずしてまで自分の戦術を強制した。だからこそ、日韓大会で結果を残したが、選手たちはけっこう不満をためこんでいたことが後に分かる。
逆にジーコはその戦術を認める代わりに攻撃を重視した。おかげで失点の多いチームになってしまったが、反面攻守の切り替えの激しい、エキサイティングなチームとなった。誤算は海外組を重視したために国内組が腐ったことだ。
オシムは、当初から日本の中盤のボール保持癖を問題視し、多彩な戦術を仕込むことでチームの変革を目指した。私自身は、この時の代表チームがお気に入りであった。俊輔も遠藤もボールを中盤でこねることを止めて、素早い攻撃に変えていたことが印象深い。かえすがえすもオシムの途中退任は痛かった。
後任の岡田は完全に指導力不足で、大会直前に本田ら中心選手が造反して、堅守速攻の弱者の戦術をとることで成果を上げた。しかし、この戦術では未来に期待をもてないことは、なにより選手ら自身が自覚していた。
そしてザッケローニだが、意外にも中盤重視の日本のサッカーを否定しなかった。むしろ長所と捉えて、その良さを伸ばすサッカーに終始した。守備重視のイタリア人のイメージとは、かけ離れたものだが、残念ながら最後の最後、若手の成長に期待を賭けて、その賭けに負けたことがブラジル大会の最大の敗因だ。
そして、満を期して登場したアギーレだが、私は結構期待していた。少なくてもアジア大会を見た限り、決して悪いサッカーだとは思わなかった。あんな形での退任は残念で仕方ない。
その後任として突如、登場したのがハリルホジッチである。いったいどんなサッカーを見せてくれるのかと思ったが、反面指導する時間が短すぎるので、この二試合は顔見世興行程度にしか考えていなかった。
ところが、見事な二連勝である。親善試合であり、ホームでの試合であることを差し引いて考えなければいけないが、若手の奮闘ぶりが目についた。それは決して不快ではなく、むしろ爽快ですらあった。
二試合の戦い方を見る限り、一見堅守速攻型のサッカーに見えるが、おそらくそうではあるまい。まだチームに合流して日が浅く、自分の戦術をチームに課すのは無理と踏んで、最低限勝てる戦術として、堅守速攻を選んだだけだと思う。
更に付け加えるなら、最大の勝因は戦術ではなく、これまで代表に呼ばれても試合に出れなかった選手たちを全員使ったことだろう。これで選手のモチベーションが格段に上がり、それが勝利につながったと私は見ている。長くエースであった本田や香川といった海外組を特別視しなかったことも大きい。
つまり選手の掌握の上手い監督なのだろう。アギーレの退任は残念だが、この新しい監督も十分期待を持てる人材だと思えた。これから長く厳しいアジア予選が始まる。じっくりと見ていこうと思う。